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.政治  投稿日:2018/12/10

「沖縄県民投票すべきでない」日本維新の会下地幹郎衆議院議員


「細川珠生のモーニングトーク」2018年12月2日放送

細川珠生(政治ジャーナリスト)

Japan In-depth編集部(小俣帆南)

【まとめ】

・沖縄県知事選は「弔い合戦」の要素が強い異例の選挙だった。

・玉城氏の勝利は移設反対派の勝利ではない。

・県民投票やると移設反対派票が玉城氏獲得の39万票以下になる可能性あり。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=43168でお読みください。】

 

今年9月、前知事が現職のまま亡くなるという異例の事態の中で、沖縄県知事選が行われた。

日本維新の会で政調会長を務める下地幹郎衆議院議員(沖縄1区)をゲストに迎え、現在そしてこれからの沖縄の姿について、政治ジャーナリストの細川珠生氏が話を伺う。

沖縄県知事選の結果、普天間飛行場の辺野古移設反対の翁長前知事の方針を引き継ぐ形で、玉城デニー氏が新知事に選出された。この結果を受けて、基地移設に反対する県民の意思が表明されたとする報道が相次いだが、細川氏は「沖縄県民の真意がどこにあるのか分からない」と話した。

これに対して下地氏は「今回の選挙は基地問題ではなく弔い合戦」とし、移設問題に対する県民の民意が表明されたというよりは、前知事が現職のまま亡くなったという特異性が今回の選挙の一番の特徴だと話した。選考委員会によってではなく翁長前知事の遺言によって玉城氏の立候補が決まったことや、出馬表明や政策発表の場に翁長氏の遺影や帽子などが置かれていたこと、玉城氏の妻の単独インタビューなど、「弔い合戦としてのシナリオが今回の結果」だと話す。よって「玉城氏の勝利は移設反対派の勝利とはならない」と述べた。

10月31日には「辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票条例」が公布、施行された。細川氏は「今回の特殊な状況は選挙の弔い要素を強め、その結果、県民も冷静に判断する間もなく知事選を終えたということか」と疑問を呈し、「それがあっての県民投票ということなのか」と、基地移設についての県民投票が行われようとしている背景について下地氏に尋ねた。

下地氏は今回の県民選について、「県民が冷静に判断をしなかったとは言えないが、今回のようなケースは初めてだった」と改めて特殊な事態だったことに言及し、それが原因となって「基地問題や経済政策よりも、前知事が亡くなったということに焦点が当たった選挙」になったのだとした。

更に下地氏は「県民投票をするのは間違い」だとし、その最も大きな理由について、「県民の5割は選挙に行かないだろう。(改めて県民投票をすれば、基地移設反対派が)玉城氏が県知事選で獲得した39万票以下になる可能性もある。そのような数字が出てしまえば、沖縄にとって国との関係の中でマイナス要因になるのではないか」と述べた。9月の県知事選で玉城氏が獲得した39万の票について、現在は全ての票が基地移設反対派だと考えられているが、県民投票をすることで39万全票が反対派の意見ではなかったことを敢えて明らかにすることになるのではないかと言う。

下地氏が県民投票に反対する理由は他にもあると言う。第一に、「最高裁判所の判決が出ているものを県民投票するのは間違い」だと言う。県民投票というのは司法に訴えない場合に民意の中で取る手法であり、それを「自分たちで司法に訴えておいて思うような結果が出なかったから、再度県民投票をするのは違う」ということだ。

▲写真 ©Japan In-depth編集部

第二に、政府はもう既に工事に着工しており、来年の3月には終わる見込み。「終わることに対して県民投票しても仕方がない」と言う。投票は県民投票条例公布日(10月31日)から6カ月以内に実施され、期日は玉城氏が決める。沖縄防衛局は近く工事を再開し年内にも土砂投入に踏み切る構えで、投票の実施時期が焦点となっている。

第三に、県民投票には5億円ものお金がかかることを挙げ、「上述のように沖縄にとってデメリットばかりである県民投票を、それほどの大金をかけてやる意味があるのか」と疑問を呈した。

そして最後に、県知事選が沖縄の分断を招いたと言われていることに触れ、さらなる分断を招くかもしれない県民投票に踏み切ることに疑問を持っているとも述べた。

「今後玉城氏はどのような政策に出るとお考えか」という細川氏の質問に対して下地氏は、「玉城氏が下すべき最終判断は、国と今後4年間“喧嘩”を続けるのか、自分で違う提案をするのか、という2択」だと答えた。

「後者の選択をする方が望ましい」という細川氏の意見に対し、下地氏は「後者の選択を実行するのは難しい」と述べ、一概に後者の方が良いとは言えないとの考えを示した。対して細川氏は「確かに難しいが、“喧嘩”をしていても何も進まない」と述べた。

国と沖縄との争いを“喧嘩”と表現した下地氏は、「辺野古移設に反対の共産党や社民党は政治的な力を増大出来るので喧嘩好き」だと述べ、対立が止まない構図はそれが原因だとの考えを示した。細川氏は「確かに共産党や社民党はそうすることで存在意義が見いだせる」とする一方、「しかし、前進できる提案をするのが玉城氏の知事としての責任だ」との考えを示した。

下地氏は条例を作る権利を持つのも埋め立ての認可権を持つのも沖縄県であることに言及し、「この2つの権利を行使すれば100年経っても防衛省は仕事が出来ない」と述べ、辺野古移設を阻止することが出来るはずなのに沖縄がそれをしようとしないのは、「喧嘩を続けるため」だと言う。「上述の2つの権利を使ってしまったら、沖縄が勝って終わってしまう」から、沖縄は敢えてそれらの権利を使わないとのだ、と分析した。

細川氏は「沖縄が“まだ移設問題で揉めている”と見られると、アメリカとの関係の中でも国益として失われるものが大きいのではないか」と述べ、沖縄の姿勢やその背景に疑問を呈した。

対して下地氏は「普天間基地は22年使い続けているが、発着回数などを減らしてもアメリカ側には何の問題もない」と述べ、基地問題がアメリカとの関係に悪影響を及ぼすとは考えにくいとの見解を述べた。さらに日本にとっても「淡々とただ喧嘩を続けているだけで、日本政府も何かをストップさせたりはしていない」ため、問題はないと述べ、その上であくまでも沖縄が喧嘩を続けようとしているだけだと話した。

最後に細川氏は「まず国の安全保障をどうするのか国政レベルでしっかりと考えて欲しい」と述べ、その上で基地問題について国政レベルで検討を続けていくことが重要だとした。一方で「現在動いている基地問題を短期で解決しなければいけないことを考えると、既に22年経っている普天間の問題が収まることが、日本の防衛体制を整えるという意味でも大事かと思う」と話し、国全体の問題として沖縄に向き合う姿勢が重要だとの見解を示した。

(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2018年12月2日放送の要約です)

 

「細川珠生のモーニングトーク」

ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分

ラジオ日本HP http://www.jorf.co.jp/index.php

細川珠生公式HP http://hosokawatamao.com/

細川珠生ブログ  http://tamao-hosokawa.kireiblog.excite.co.jp/

トップ画像:©Japan In-depth編集部


この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト

1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。

細川珠生

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