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.国際  投稿日:2024/12/20

トランプ氏はなぜ勝ったのか ドーク教授の分析 その11 LGBTが人間社会を変える


古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

古森義久の内外透視

【まとめ】

・ケビン・ドーク氏は、日本が「普通の国」になるには、アメリカを例外的な国として考えるのをやめる必要があるという。

・古森氏は、日本の戦後体制はアメリカの占領と依存から生まれたと説明する。

・ドーク氏はアメリカのLGBT政策を日本が受け入れるのではなく、文化的な距離を保つべきだと述べる。

 

ケビン・ドーク「しかし日本の『戦後レジーム』は軍事や外交の問題よりも深く、広範であると私は指摘したいです。戦後の体制が機能し続けることができるのは、多くの日本人がいまだにアメリカに対して、アメリカを例外的な国、日本があらゆる面で見習うべき理想の国だとみなす心理的な態度をまだ持っているからでしょう。

 

日本がこの戦後体制から脱出するためには、日本人はアメリカを例外的な国と考えるのをやめて、ただの普通の国とみなすようになる必要があります。より多くの日本人がアメリカを普通の国としてみるようになってこそ、日本を普通の国にすることができるのです。

 

この二つの事柄は直接的な関係にあります。もしアメリカが例外的な国であるならば、日本は普通の国にはなれません。 しかしアメリカが普通の国であるならば、日本も普通の国になれるのです」

 

古森義久「きわめて難しい課題ですね。日本がこれまで『普通の国』ではないままできたことはご指摘の通りです。ただしその発端は日本と戦争をして、勝利を納め、占領したアメリカが主権を十分には行使できない日本を作り上げたわけです。アメリカの占領軍が作成した日本国憲法がその手段でした。しかし日本国民の多数がその憲法を歓迎しました。主権を抑えたハンディキャップ国家にされたことをどこまで意識したかは簡単にはわかりませんが、『平和憲法』として受け入れました。

 

その背景には日本の安全保障は軍事大国のアメリカに依存するという構図がありました。アメリカはその依存を十二分に引き受ける強さを持つ超大国でした。例外の国家だったともいえるでしょう。ただし歴史の皮肉だったのは、日本を自国に依存させた当のアメリカが朝鮮戦争のころから、日本にも武装を求めるようになったという事実です。

 

武装は本来の平和憲法では許されない事態です。それ以降、アメリカの歴代政権は安保や防衛の面では日本が普通の国になってもよい、という方向へ傾いていきました。こんな歴史を考えると、日本がアメリカを普通の国家だとみなすことは現在でも難しいという気がします」

 

ドーク「そうですか。このあたりは私たちの意見はやや異なるようですね。でも日本が普通の国になるべきだという点では古森さんも、もちろん賛成ですね。

 

では日本がこの『普通の国』への成長を加速させるためには、いま何ができるのか。目前の具体的な課題としては、まず日本はLGBTの性的基準を推進するというアメリカの貧弱な例に従うべきではありません。

 

この点ではすでに確実となったラーム・エマニュエル大使の交代は日本にとって大きなチャンスです。 トランプ次期大統領はすでに前政権時代にポルトガル大使に任命した実業家のジョージ・グラス氏を次の駐日大使に任ずると発表しました」

 

古森「確かにエマニュエル大使の日本国内でのLGBTに関する言動は異常でしたね。アメリカでもなお国内での意見が大きく分かれる課題についてその一方の意見を日本に押しつけようとした。内政干渉を通り超す非常識な動きでした。そんな大使が日本を去るというのはよいニュースです。

 

 そもそもエマニュエル氏という人物はオバマ大統領の首席補佐官、下院議員、シカゴ市長などを歴任した民主党の大物ですが、自己主張の過激などぎつい言動で知られてきましたね。自分の嫌いな政敵に腐った魚をきれいな箱にプレゼント風に包装して送るというエピソードはワシントンでも有名でした」

 

ドーク「LGBTの性的慣習を社会規範として位置づけようとするごく最近の実験は、人類の歴史を通じて多様な文化で理解され実践されてきた自然法との決別であることは確かです。 この最近の性革命が社会全体にとってよいことだと確信するには、まだそのための証拠が不十分です。 日本はアメリカ文化のこの側面からは距離を保っておくことが賢明でしょう。

 

一部の日本人はLGBTへの反対は主にキリスト教の問題であり、日本人の大多数はキリスト教徒ではないからこそ、日本は性道徳について大騒ぎする必要はないと考えるかもしれません。しかしLGBTの推進課題に対する反対は、多くの場合、キリスト教徒によって主導されるかもしれませんが、問題自体はキリスト教に限定されません。

イスラム教徒、正統派ユダヤ教徒、その他多くの人々は、これらの道徳的問題についてキリスト教徒に同意しています」(つづく)

 

写真:ラーム・エマニュエル駐日米国大使が記者会見会場にホワイトハウスに到着した時の様子(2024年4月10日、ワシントンD.C)

出典:Photo by Andrew Harnik/Getty Images

 




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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