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.経済  投稿日:2023/10/4

虎ノ門ヒルズステーションタワー開業~都市インフラ整備と再開発プロジェクトの合体~


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・10月6日、「虎ノ門ヒルズステーションタワー」が開業。

・交通結節機能を持ち、臨海地区や羽田空港へのアクセス向上。

・「都市再生」と「インフラの整備・更新」を実現、国際競争力向上目指す。

 

2014年虎ノ門ヒルズ開業から9年目の今年10月6日、虎ノ門ヒルズに新たな施設、「虎ノ門ヒルズステーションタワー」が開業する。

その後順次今年から来年にかけて、「ステーションタワー」内地下フードコート「T-MARKET」、「ホテル虎ノ門ヒルズ」、商業施設第2弾、「SELECT by BAYCREW’S」、フィットネス施設「CARAPPO」とオープンが続く。

2023年10月2日、「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」のメディア内覧会」に取材に行ってきた。

▲写真 虎ノ門ヒルズステーションタワー ⓒJapan In-depth編集部

まず、「虎ノ門」という地域になじみのない人もおられると思うので、ちょっと説明すると、この地域は、東京都港区にあるオフィス街で、鉄道発祥の地、新橋駅(JR東日本)や、官庁街霞が関駅(東京メトロ日比谷線、千代田線、丸の内線)のすぐ近くに位置する。

六本木ヒルズを開発したデベロッパー大手、森ビル株式会社が「虎ノ門ヒルズ」再開発事業にも取り組んでいる。

2014年開業の「虎ノ門ヒルズ森タワー」に続き、「虎ノ門ヒルズビジネスタワー」(2020年)、「虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー」(2022年)と順次開業し、今回、「虎ノ門ヒルズステーションタワー」の開業をもって、「国際新都心・グローバルビジネスセンター」形成に向けてハイピッチで拡大してきた区域面積約7.5ha、延床面積約80万m²の「虎ノ門ヒルズ」が完成する。

▲写真 虎ノ門ヒルズの概要 出典:森ビル株式会社

虎ノ門ヒルズの特徴は、なんといっても「都市インフラ整備と再開発プロジェクトの合体」だろう。

どういうことか。具体的に見てみよう。

■ 立体道路

まず、2014年竣工の「森タワー」。画期的だったのは、道路の上下の空間に建物を建築したり、道路と一体構造の建物を建築することを可能とする「立体道路制度」(平成元年創設)を活用し、環状二号線と超高層タワーを一体的に整備したことだ。

環状二号線が68年の歳月を経て、2022年12月に全面開通したことで、東京都心部と臨海部や羽田空港とのアクセスが飛躍的に向上した。

▲図 出典:森ビル株式会社

「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」は、東京メトロ日比谷線新駅「虎ノ門ヒルズ駅」(2020年6月6日開業)や、銀座線「虎ノ門駅」と地下通路でつながり、1階部分には空港リムジンバス(現在休止中)や都心部と臨海部を結ぶBRT(バス高速輸送システム)のバスターミナルがある。虎ノ門ヒルズ地区からは、臨海部の東京ビッグサイト(東京国際展示場)まで車で10分程度、羽田空港の第2ターミナルまでも最速約18分で行けるようになった。まさに「東京の玄関口」といってもいい。

▲写真 BRTバスターミナル(ビジネスタワー)出典:森ビル株式会社

■ ステーションアトリウム(駅前広場)

今回「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」では、約2,000m²の広さを誇る「駅前広場(ステーションアトリウム)」(以下、アトリウム)を備えた東京メトロ日比谷線の新駅「虎ノ門ヒルズ駅」を完成させた。「駅と街の一体開発」によって「交通結節機能」を強化させた。

ユニークなのは、地下1階部分に位置する地下鉄駅のホームからガラス越しに、地下2階のアトリウムを見下ろすことができることだ。

駅改札を出るとすぐにアトリウムへ。三層吹き抜けで地下鉄の駅とは思えない開放感と明るさがある。ガラス張りの天窓から光が差し込み、地下鉄から出る人が自然に地上にでられるように、街の人は地下を見られるような作りになっている。

その先には、7時から23時まで営業しているフードコート「T-MARKET」(27店舗)が位置する。夜遅くまでやっているので、仕事終わりにサクッと立ち飲みを楽しむ人たちでにぎわいそうだ。何しろ駅は目の前だ。

▲写真 「T-MARKET」後ろ側が「虎ノ門ヒルズ駅」改札 ⓒJapan In-depth編集部

ちなみに、このスクエアは自然災害時には帰宅困難者一時滞在施設として利用される。「ステーションタワー」で約950人分、「ビジネスタワー」約1000人、「森タワー」約3600人と合わせ、虎ノ門ヒルズ全体で約5600人の帰宅困難者の受入れ体制を構築した。3日分の食糧も備えられている。

六本木ヒルズから培われてきた「逃げ出す街から逃げ込める街へ」のコンセプトは虎ノ門ヒルズでも引き継がれており、密集した都市再開発のあり方のモデルとなっている。

▲写真 ステーションアトリウム 出典:森ビル株式会社

■ T-デッキ(歩行者デッキ)

また4棟をつなぐ地上の歩行者デッキと地下通路も整備するなど、再開発によって東京の「都市再生」と「インフラの整備・更新」を実現。

さらに、4つの建物をつなぐ歩行者デッキと地下通路により、街を分断せずに歩行者の移動を可能にした。

「T-デッキ」と名付けられた歩行者デッキは森タワーのオーバル広場とつながっており、植栽も多く、幅20メートルと広々としているので、通行するだけでなく、今後は椅子とテーブルを出して、人がくつろぐ場にもする予定だ。

▲写真 T-デッキ ステーションタワーから森タワーへ向かう ⓒJapan In-depth編集部

下には国道1号線(桜田通り)が走っている。デッキは歩車分離を実現し、安全・安心な街づくりに貢献するだけでなく、街区や幹線道路を跨いだ東西のメインストリートとしての機能も持つ。

こうしたデッキは、隣に建設中の虎ノ門病院にもつながる予定で、歩行者の利便性は格段に高まると思われる。

▲写真 植物が多く広々とした歩行デッキ(T-デッキ)虎ノ門ヒルズ森タワーからステーションタワー方向へ ©Japan In-depth編集部

▲写真 上空から見たT-デッキ(写真中央) 出典:HILLS LIFE

以上ざっと虎ノ門ヒルズ地区のインフラ周りを見てきたが、同地区では ①ビジネス発信拠点 ②国際水準の宿泊機能 ③外国人就業者・居住者等のための情報・交流拠点などが導入される。

麻布台ヒルズ地区も目指しているが、東京の国際競争力向上に虎ノ門ヒルズ地区も貢献するだろう。普段、虎ノ門地区に足を踏み入れたことのない人も、一度は覗いてみてほしい。自分の足で歩いてみれば、都市インフラと再開発の調和がいかに重要かがわかるはずだ。

▲写真 虎ノ門ヒルズステーションタワーを虎ノ門ヒルズ森タワーのオ^バル広場から望む ⓒJapan In-depth編集部

トップ写真:「虎ノ門ヒルズ」全景 右手が「虎ノ門ヒルズステーションタワー」出典:森ビル株式会社




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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