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.国際,.社会  投稿日:2025/5/27

ハーバード大学で遺体売買のスキャンダル


古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・5月22日、ハーバード大学医学部遺体保管所の元管理責任者セドニック・ロッジ被告が死体の不法な取得や運搬、売却などの罪を認めたことが明らかに。

・その価格は一件の例で600ドル、また常連1人から約3年間に合計約4万ドルとの記録も。

・ハーバード大学医学部ジョー・デイリー学部長は「当学部としても深く謝罪したい」と骨子の声明を発表。

 

 

トランプ政権から反ユダヤ主義やパレスチナ支援活動を非難され、連邦政府の補助金の停止を告げられているアメリカ名門のハーバード大学の医学部で医学研究用の遺体を不法に横流しして、臓器の売買をしていた遺体安置所の元管理責任者がこの5月下旬の裁判で有罪を認めたことが明らかになった。ハーバード大学がトランプ政権への反発で注視を集めるこの時期の同大学が直接にからんだこの犯罪行為は意外な政治的波紋をも広げる展望も語られるようになった。

 

 

アメリカのペンシルベニア州中部地区の連邦地方裁判所は5月22日、マサチューセッツ州のハーバード大学医学部の遺体保管所の元管理責任者セドニック・ロッジ被告(57)が人間の死体の不法な取得や運搬、売却などの罪を認めたことを明らかにした。同被告を起訴したペンシルべニア州中部地区の検察官事務所の発表によると、ロッジ被告はハーバード大学の遺体保管所に勤務していた2018年から2020年の間に同大学医学部に研究用あるいは教育用として寄付された遺体多数を勝手に持ち出し、臓器移植などを必要とする関係者に売りさばいていた罪で他の5人の共謀者とともに2023年6月に起訴された。

 

同検察の発表ではロッジ被告らは多様な遺体の脳、内臓、皮膚などをニューハンプシャー州の自宅にまず運び、そこから東部各州の臓器を必要とする関係者らに遺体の各部分を売っていたという。起訴状によると、遺体は同医学部での臨床の研究用、あるいは医学部学生の教育用として解剖される場合が多いが、ロッジ被告らはその処理を待たずに遺体を横流しすることも頻繁だった。

 

その価格は切断された頭部が一件の具体例だと600ドル、またロッジ被告側には常連の買い手の1人から約3年間に合計約4万ドルが払われた記録もあるという。

 

検察当局はロッジ被告の背後になお大規模な遺体や臓器の不法販売の組織が存在するとみて、捜査を継続している。なおロッジ被告の有罪の認定に対して懲罰は少なくとも懲役10年が予測されているという。

 

 

なお今回、ロッジ被告が有罪を認めたことについてハーバード大学医学部のジョー・デイリー学部長はアメリカのメディアに対して「ロッジの犯罪行為は遺体を当学部に医学への貢献として寄贈してくれた方々への恥ずべき裏切りであり、当学部としても深く謝罪したい」という骨子の声明を発表した。

 

 

ハーバード大学はいまトランプ政権から学内での反ユダヤ主義とされる言動などについて非難を浴び、その非難を不当だとして政治対決の構えまでをとっている。この時期にいまのその対決とは直接、無関係だとはいえ、この種のスキャンダルが改めて表明に出て、全米に幅広く報道されたことは印象としてハーバード大学の立場を不利にする動きとして注目されている。

 

 

 

 

 

トップ写真)ハーバード大学(アメリカ、マサチューセッツ州)

出典) Getty Images/Andrew Lichtenstein

 




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