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.国際  投稿日:2019/2/18

韓国反日感情、非は日本側に非ず


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視 」

【まとめ】

・レーダー照射は実質上の軍事攻撃。

・韓国民の日本への悪感情は日本に非があるのか?

・反日とは韓国民の「自分らしさの宣言」なのである。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=44198でお読み下さい。】

 

韓国の反日とはなんなのか――

日本と韓国との関係がこれほど悪くなってくると、日本側としては韓国がなぜこれほどに日本を叩き、ののしり、侮辱するのかを深層にまで踏み込んで探求する必要があるだろう。日本は韓国にどう対応すべきなのかという重大な課題も、まず相手の反日の真相を知ってからだろう。

韓国側の日本に対する一方的な悪意の言動は果てることがない。2015年の日韓両国政府間での慰安婦問題の最終決着合意を破っての問題を再燃化させての不当な日本誹謗、1965年の日韓国交正常化での国際公約を破っての戦時中の国家総動員への補償の理不尽な要求と、いずれも文在寅政権自体が反日の明確な意思を表示しての無法な動きだった。

▲写真 カリフォルニア州グレンデール市の公園に設置された慰安婦像 出典:Wikipedia; Ka-cw2018

韓国軍艦による日本の自衛隊哨戒機への火器使用レーダー照射にいたっては実質上の突然の軍事攻撃に等しい。韓国軍がともにアメリカの同盟相手である日本の航空機に対して戦闘行為に近い攻撃態勢をとることは、国際的な常識では想像もできない。

▲写真 韓国海軍の駆逐艦「広開土大王」 出典:Frickr; 대한민국 국군 Republic of Korea Armed Forces Follow

私自身の報道体験でもこの火砲使用レーダー照射が平時に行われることは異様きわまることが歴然としている。古い話だが1970年代前半のベトナム戦争中、私は当時の南ベトナムで米軍の軍事行動を報道していた。そのころの米軍は南ベトナムに攻撃をかけてくる北ベトナム軍の拠点を空爆していた。その際には米軍機が北ベトナム上空を飛び、北側からレーダー照射を浴びると、もうその瞬間に攻撃を受けるに等しいという判断を下してその照射の発射源にロケットやミサイルを即時に撃ち込んでいたのだ。

▲写真 ベトナムで爆弾を投下するアメリカ空軍のボーイングB-52 出典:Official United States Air Force Website

米軍はこの種のレーダー照射を英語でlock onと表現していた。つまりカギをかけるように攻撃目標として捕らえるという意味だった。米軍機がlock onされれば、それはもう敵がこちらを撃つために照準を合わせたことであり、瞬時に自衛のために攻撃に移る、ということなのだった。

だから照射を受けた自衛隊機は韓国軍からすぐに実射攻撃を受けてもおかしくなかったのだ。韓国軍のそれほど異様な行動だったのだ。韓国側のこのような日本に対する言動に共通するのは日本への憎悪、悪意、敵意である。一言にまとめれば反日だといえよう。日本はそれに対応すべきか。日本側の一部には「あくまで冷静に」とか「丁寧な無視を」という、結局はなにもしないことを提唱する声も強い。だが現実には韓国からすれば、日本にはなにをしても、なにを言っても、反発はないから大丈夫だという意識が明らかに徹底している。日本が相手ならば、どんなことをしても安心だという認識である。だから日本側への不当、無法の攻撃は果てしなく続き、さらにエスカレートしていくこととなる。

さてでは韓国の反日とはいったいなんなのだろう。なぜ反日なのだろう。

日本側では長年、韓国民が日本に悪感情を抱くのはひとえに日本の過去の行動、とくに日韓併合による朝鮮半島の統治の歴史が原因だとする考察が主流だった。あるいは戦後の日本側の韓国へのネガティブな言動が原因だとする考察も多かった。要するに非は日本側にあるという認識である

ところがまったく異なる見解も存在する。しかもその見解は日本側でも韓国側でもない中立の第三者が発表しているのだ。その見解は簡単にいえば、韓国の反日感情は非は決して日本側にはない、原因も日本側になないのだという斬新な分析である。

つまりは「日本側の好ましくない言動が韓国側の反日を引き起こしている」という日本側の年来の考察の否定なのである。アメリカ人の政治学者による見解だった。その見解はワシントンで大きな波紋を広げた。

2015年6月のことだった。東アジア研究専門のアメリカ人政治学者で韓国の釜山国立大学准教授のロバート・ケリー氏は、「なぜ韓国は日本への脅迫観念にこれほどとりつかれているのか」と題する論文を発表した。アメリカの政治雑誌「ナショナル・インタレスト」など数誌に載った同論文はまさに韓国の反日の本質を論じていた

▲写真 Robert E Kelly准教授(右)出典:Robert E Kelly Official Twitter

ケリー論文の骨子は以下のようだった。

・韓国の反日は歴史や政治を原因とするよりも韓国民の自己認識(identity)そして朝鮮民族としての正統性(legitimacy)を内外に認めさせるため主張であり、自分の自分らしさの宣言なのだ。

・韓国は朝鮮民族としての歴史や伝統での純粋性、自主性を説いても北朝鮮にはかなわない。そのギャップを埋めるのが日本叩きなのだ。北朝鮮との正統性主張の競争での道具として反日を使っているのだ。

・韓国独自の北朝鮮に対する優位を説くには韓国側には米欧諸国や日本からの影響が多すぎる。民主主義も腐敗が多すぎる。だから日本を悪と位置づけ、叩き続けることが自国や自国民礼賛の最有効な方法となるのだ。

以上がケリー論文の最重要点だった。

ケリー氏の指摘が真実を指し示しているとすると、韓国の反日は日本の過去や現在の言動にかかわりなく存在するということになる。反日はその存在自体に意義があるのだから日本が謝罪しても補償してもなにも変わらないことにもなる。

日本の学者や政治家がこんな見解を述べたら大変なこととなろう。だが日本との特別なきずなもないアメリカ人学者が韓国に長期、住んだうえでのこうした論考ならば客観性は否定できない。韓国側も文句はいえないだろう。

韓国側の反日の原因も責任も実は日本側にはないのだとすれば、韓国の日本叩きはますます不当で理不尽ということになる。自分たちの独特の劣等感さえがからんでいるような勝手な感情だとすれば、日本側はそんな不当な感情の発露には代償を払わせる必要があるだろう。勝手に他国、他国民を誹謗中傷して、なんの制裁も懲罰も報復も受けないというのは一般の人間社会でもあってはならない状態である。まして理性や規則が尊重されるべき国際社会ではさらにあってはならない状況だといえる。

日本もついに行動を起こす時である。

トップ写真:A comfort women rally in front of the Japanese Embassy in Seoul, August 2011 出典:Wikipedia; Claire Solery


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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