人口減の日本は中国パワーの流入とどう向き合うべきか

福澤善文(コンサルタント/元早稲田大学講師)
【まとめ】
・中国人観光客と留学生が急増し、日本社会に影響を与えている。
・外免切替申請者も急増し、事故多発で制度見直し検討がされている。
・人口減の日本で外国人流入増加に対し、政府は対策を急ぐべき。
日本での中国人のプレゼンスの高まりが止まらない。良い意味での高まりであれば構わないが、このままだと日本社会に害を与えるリスクもある。
2025年1〜4月期の訪日外国人客数は14,446,600人と前年同期比+23.1%だった。そのうち中国人観光客数は3,130,200人(前年同期比+68.1%)で、大きな伸びを見せた。
経済的には、日本の国際収支の観光勘定に潤いを与えてきたが、日本人社会にモラル面でマイナスの影響を与えている中国人観光客がいるのは残念だ。これまで、落書きや鉄道線路への立ち入りなどSNSで紹介された中国人観光客の行動は彼らの一部による行動だと思っていたが、身近で日本人を困らせる行為を目にしたり聞いたりするようになってきた。禁煙にも拘わらず喫煙したり、大声で騒いだりしている中国人観光客を見ると、ひと昔前の「旅の恥はかき捨て」の日本人観光客を思い出す。
中国人留学生が日本で急増していることは「日本で急増する中国人留学生(2025年4月4日)」で述べた。2024年の外国人留学在籍状況調査によれば、日本における中国人留学生は123,485人(対前年比+6.9%)と驚異的な数字で、東京大学にいたっては大学院の学生の5人に1人が中国人留学生だ。中国では北京大学、清華大学などの一流校は元より、大学院となると更に狭き門だ。一流校に入学できなかった学生や、米国留学はハードルが高い学生、奨学金目当ての学生が、入りやすく、費用も米国の大学ほどはかからない日本の大学へやってくると思われる。近年、米国トランプ政権は中国人留学生のビザを取り消す旨を発表した。もしビザを取り消された中国人留学生や米国留学をめざして準備をしていた中国人学生が日本へ殺到したら日本における中国人留学生の数は更に増えるだろう。
中国人の日本留学の流れは大学に留まらず、高校にまで及んでいる。距離的にも近く、学費も安い日本へ早い時期から子弟を送り込んで、中国での過酷な受験競争から早々と距離を置く親も増えているようだ。文部科学省の「高等学校における外国人留学生(3か月以上)の受入れについて」によれば、2023年の高校での中国人留学生数は869人で、2021年の448人と比べるとほぼ倍増している。宮崎県の日章学園九州国際高校は学生の9割が、千葉県の鴨川令徳高校では総数100人中半数が、四国の高知県の明徳義塾では1000人中20%が、岡山の朝日塾中等教育学校の高校部の30%が中国人留学生だ。日章学園では入学式に中国の国旗掲揚、同国歌が歌われ、中国政府からも認定されているそうだ。
少子化で人口減少が著しい日本で、従来の数の学校を維持することは益々難しくなっている。その減少分を留学生、特に中国人留学生で埋めるのであれば、その学校は他行との併合を考えるべきだ。国際化の流れで、外国人留学生から良い影響を受けて、日本人学生が成長できればよいが、逆に外国人学生の為に日本人学生が本来受けるべき教育の機会を逃し、犠牲になるようであれば、本末転倒だ。
観光客の増加と共に、外国で取得した免許を日本の運転免許証へ切り替える、いわゆる外免切替申請者がこの数年急増している。2023年の外免切替者のトップ3はベトナム(15,807人)、中国(11,247人)、アメリカ(4,250人)だった。観光客でも、滞在ホテルの住所を使って申請でき、知識試験は非常に簡単な10問中7問正解で合格、技能試験は一般道路ではなく運転試験場内の簡単なものだ。日本の運転免許を取得すれば、ジュネーブ条約加盟の米、英、イタリア、など100か国でも運転可能となる。中国、ベトナムはジュネーブ条約に非加盟なので、日本の免許証は有用だ。しかしながら、外免取得者の事故が多発していて、高速の逆走や、小学生のひき逃げなどの暴走が増えている。その結果、日本政府は外免制度の見直しを検討し始めた。想定外の事故が起きたからだそうだ。日本語を読めない外国人が、日本語の標識を理解できるわけがなく、この種の事故は外国人による日本免許取得が増えれば、十分想定できていたはずだ。しかも、日本で免許を取得した中国人やベトナム人観光客がジュネーブ条約加盟国で事故を起こしたら、諸外国にとっても迷惑だ。免許発給元の日本としてどう責任を取るつもりだろうか?
これから更に、外国人、特に中国人が日本へ押し寄せてきた場合、想定される事態は国民にとって深刻だ。準備不足の日本は予防も対処も遅すぎることが多い。事故が起きてから制度を見直し、数年後に改革案を実施するのでは遅い。外国人観光客が免税品を買って出国前に転売するようなことは、5,6年前から想定どころか頻発していた。今やっと問題視するのは遅きに失している。すでに起きた事件をモグラたたきのごとく後手後手に対処するのではなく、国民の為に即、制度、規則を替えるくらいの政治を国民は期待している。
トップ写真:外国人留学生(イメージ) 出典:Drazen_/GettyImages
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この記事を書いた人
福澤善文コンサルタント/元早稲田大学講師
1976 年 慶應義塾大学卒、MBA取得(米国コロンビア大学院)。日本興業銀行ではニューヨーク支店、プロジェクトエンジニアリング部、中南米駐在員事務所などを経て、米州開発銀行に出向。その後、日本興業銀行外国為替部参事や三井物産戦略研究所海外情報室長、ロッテホールディングス戦略開発部長、ロッテ免税店JAPAN取締役などを歴任。現在はコンサルタント/アナリストとして活躍中。
過去に東京都立短期大学講師、米国ボストン大学客員教授、早稲田大学政治経済学部講師なども務める。著書は『重要性を増すパナマ運河』、『エンロン問題とアメリカ経済』をはじめ英文著書『Japanese Peculiarity depicted in‘Lost in Translation’』、『Looking Ahead』など多数。





























