じわじわと日本に浸透する中国パワー

福澤善文(コンサルタント/元早稲田大学講師)
【まとめ】
・中国からの旅行者や留学生が急増し、日本の観光地や教育機関に大きな影響を与えている。
・不動産や火葬場、宗教法人など中国資本の浸透が進み、地域社会や制度への影響も見られる。
・日本の安全保障や教育の独立性維持のため、政府の迅速な対応が求められている。
日本では中国からの留学生が急増していると同時に、最近は観光客が大挙しておしかけている。日本政府観光局によれば、2025年1~3月の訪日外国人旅行者数は10,537,300人(対前年同期比+23.1%)で、そのうち中国からの旅行者数は2,364,900人(同比+78.1%)で、中国からの旅行者が急増していることが数字でわかる。
東京の銀座、新宿、そして日本各地の観光地へ行けば、我々はこれらの数字を実感できる。ところが、我々が気づかないところでも、中国マネー、そしてそれに付随した人々が日本社会へじわじわと押し寄せてきている。
東京都内のコンドミニアムで、ほとんどが中国人所有のものがある。共産党国家が反日を掲げ、愛国教育で若者に日本憎しのマインドを植え付け、時には、町で反日デモが起きる国の人々がどうして日本へ押し寄せるのか?現共産党政権下でいつ何時財産が没収されるかわからない。中国での医療体制の不備、教育面での不安、生活環境の悪さなどの理由からだと言われている。
北海道のニセコへ行けば、中国系不動産開発会社によるリゾート開発が加速している。ニセコはもはや日本人のための観光地ではなく、外国人の為のリゾートと化している。コンドミニアムの価格も高騰しており、購入者の7~8割が中国人、オーストラリア人を始めとした外国人だ。外国人が不動産を持つことができない中国の人々が、日本で不動産を買うことができるのには違和感を感じる。
東京都内にある9つの火葬場のうち7つが民間だ。東京博善がそのうち町屋(荒川区)、落合(新宿区)、堀ノ内(杉並区)、代々幡(渋谷区)、桐ケ谷(品川区)、四ツ木(葛飾区)の6斎場を運営している。東京博善の親会社、広済堂ホールディングスの主要株主のグローバルワーカー派遣株式会社(13.65%)、R&Lホールディングス(8.47%)2社は中文産業の子会社だ。この中文産業は中国人の羅怡文氏が創業した会社で、同氏は広済堂ホールディングス、ラオックスの会長だ。
宗教法人、特に寺、神社を求める中国人も増えているという。特定の宗派や教派に属さない単立の寺は独断で売却できる。宗教法人は、収入は非課税、固定資産税は免除など、税金面で優遇されている以外に、宗教法人の代表は帰化しやすいと言われている。また、中国人観光客の寺泊がブームで、ビジネスとしても成り立つ。現に売却斡旋のブローカーもおり、中国人からの問い合わせも多いそうだ。売却例の公表は無いが、いきなり近所の寺のオーナーが替わり、よくよく調べてみるとそれが中国人だったということもあり得る。
話を教育面へ戻すと、日本の教育に不安感を漂わせているのは、中国人留学生数だけではない。自民党の佐藤正久参議院議員によれば、国立大学では外国籍の副学長12名、公立大学では3名が任命されており、その中には中国人民解放軍との共同研究者、中国国防7校出身者、中国地方政府・大学との兼務者など複数の中国人もいるとのことだ。
日本の大学で教える中国人研究者が中国へ一時帰国して行方不明になり、しばらくして日本へ戻って来たことがあった。中国には、日本にいる中国人にも適用される法律もあるため、日本での行動、発言がウォッチされている。国公立大学の副学長を中国国籍の人物に任せてよいのか甚だ疑問だ。
有村治子参議院議員によれば博士課程向けの奨学金制度である次世代研究者挑戦的研究プロジェクト奨学金制度(2024年度)の恩恵、つまり年間290万円支給を受けている学生総数10,564人のうち、4割が外国人留学生で、そのうち半分強は中国人学生だという。
早稲田大学は中国人留学生が日本ではもっとも多いと言われている。筆者が担当したクラスでも、受講生の中に、毎年、中国からの留学生の姿があった。特に2015年あたりから、優秀な中国人留学生が増えた。クラスの中で、中国人留学生に教えられる日本人学生の姿を見ると「日本人頑張れ!」と心の中で叫んだものだ。
日本の大学教育のレベルを上げないと、大学教育まで中国パワーに圧倒される。この中国人留学生の教育機関への浸透は既に高等教育にまで及んでいる。日章学園九州国際高等学校は、在学生の9割近くが中国人学生で、入学式や卒業式では中国の国歌を歌わせるそうだ。日本の文科省、中国の国家教育部の両方から認定を受けた学校だ。学生募集難の為に中国人留学生頼みにアクセルを踏みかえた学校だ。他にも生徒募集難の高校が同じ道を進むかもしれない。
人口の急激な減少下にある日本には、様々なシーンに‘中国’が押し寄せてきている。コロナ以前の中国観光客のほとんどは爆買い客だった。しかしながら、最近の中国からの訪日客は目的が違うようだ。日本へのプラスの面、マイナスの面があろうが、日本人の生活はもちろん、日本の国家安全保障にマイナスの影響が及ばないように、政府には早急に手を打ってもらいたいものだ。
トップ写真:心斎橋のショッピングストリートにあふれる多くの中国人観光客@大阪、日本 — 2018年2月18日
出典:Photo by Zhizhao Wu/Getty Images
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この記事を書いた人
福澤善文コンサルタント/元早稲田大学講師
1976 年 慶應義塾大学卒、MBA取得(米国コロンビア大学院)。日本興業銀行ではニューヨーク支店、プロジェクトエンジニアリング部、中南米駐在員事務所などを経て、米州開発銀行に出向。その後、日本興業銀行外国為替部参事や三井物産戦略研究所海外情報室長、ロッテホールディングス戦略開発部長、ロッテ免税店JAPAN取締役などを歴任。現在はコンサルタント/アナリストとして活躍中。
過去に東京都立短期大学講師、米国ボストン大学客員教授、早稲田大学政治経済学部講師なども務める。著書は『重要性を増すパナマ運河』、『エンロン問題とアメリカ経済』をはじめ英文著書『Japanese Peculiarity depicted in‘Lost in Translation’』、『Looking Ahead』など多数。
