多党連立化時代の日本政治:保守ポピュリズムが外交に与える影響

宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2025#29
2025年7月28日-8月3日
【まとめ】
・保守ポピュリズムをテーマに政策シミュレーションを行った。
・演習は日本の議会政治が既に「多党連立化」の時代に入りつつあることも予感させるものだった。
・ポピュリズム政党に「パーフォーマンス」能力はあっても、長期政権維持のための冷徹な外交戦略はなかった。
この原稿は未明のニューヨーク・マンハッタンのホテルで書いている。名前はカーネギーホテル、そう、あの有名なカーネギーホールに隣接する、ちょっと小さいが小奇麗でお洒落なホテルだ。当地で「何か喋れ」というご要望を頂き、筆者恥ずかしながら「オノボリサン」丸出しの気分でホテルにチェックインした。
さて、夕食前になったのでFOXニュースでも見るか、と思ってふとTVの電源を入れたら、何と、このホテルからそう遠くないマンハッタンのど真ん中で銃の乱射事件があり、警官一人を含む4人が死亡したという。ワシントンしか知らない「田舎者」の筆者は改めて80年代の「ニューヨーク」を思い出し、怖くなってしまった。
まだ7月末だというのに、今回の事件は2025年に入って254回目の銃乱射事件だとCNNが淡々と報じていた。7月28日は2025年の209日目だから、今年になって米国では一日当たり254/209=1,22回の乱射事件が起きていることになる。日本でこれだったら大騒ぎだろうが、さすがはアメリカ、254回でも皆平常心である。
さて、ニューヨークとワシントンの出張報告は来週書くことにして、今週は先週末に「保守ポピュリズム」をテーマに都内某所で行ったキヤノングローバル戦略研究所主催の政策シミュレーションについてご報告したい。今回も官界、学界、ビジネス、ジャーナリズムの精鋭約40人が集い、関係政府・報道関係者等の役を一昼夜リアルに演じてもらった。猛暑の中御参加頂いた各位の知的貢献に深甚なる謝意を表したい。
今回は敢えて国内政治にも焦点を当て、状況は近未来の日本、新興保守ポピュリズム政党が連立政権入りする状況を想定した。勿論、完全なフィクションのシナリオで実在する団体とは関係ありません・・・などと、まるでTVドラマの最後に流れる「但し書」きのようになってしまったが、結果は予想以上に驚きだった。
詳細は今週木曜日に掲載される産経新聞のWorldWatchをご一読頂きたいが、ここではそのサワリだけご紹介しよう。たかが演習、されど演習である。筆者のとりあえずのtakeawayは次の通りだ。
①ネット選挙の時代、まともな政策だけでは票が出ない、②ポピュリスト政党はSNSでバズって票を出している、③だが、この手法を外交で使うには十分注意が必要だ・・・・今回の演習では、ポピュリズム政党に「パーフォーマンス」能力はあっても、長期政権維持のための冷徹な外交戦略はなかった・・・。「バズる」ためのパーフォーマンスと冷徹な安全保障政策を如何に両立させるのか、いや、そもそも、両者は両立可能なのだろうか・・・。
もう一点、今回の演習は日本の議会政治が既に「多党連立化」の時代に入りつつあることも予感させるものだったが、この点については先週末のJapanTimesに「日本の国会がクネセット(イスラエルの議会、小政党乱立のため不安定な連立政権となることが多い)のようになるのではないか、とも書いておいた。乞うご一読!
さて、今週は移動が続くので、このくらいにさせて頂く。いつものとおり、この続きは今週の今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
トップ写真:マンハッタンミッドタウンで発生した銃撃事件 発生した晩、NY市警の警察官が警戒を続ける(2025年7月28日ニューヨーク市マンハッタン)出典:Spencer Platt/Getty Images
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この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表
1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。
2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。
2006年立命館大学客員教授。
2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。
2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)
言語:英語、中国語、アラビア語。
特技:サックス、ベースギター。
趣味:バンド活動。
各種メディアで評論活動。

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