国民民主党代表選 外国人政策 玉木・橋本両氏の主張はどう違うのか
執筆者:安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【本稿のポイント】
・玉木雄一郎代表は「日本にとって都合のいい人だけ入れたらいい」と述べ、入り口の選別と総数の管理を国が行うべきだとした。
・橋本幹彦氏は「比率よりは質」として、日本語と所得を基準に置き、受け入れに伴う負担は国と企業が負うべきだとした。
・二人の違いは受け入れの是非ではなく、基準を人数に置くか、個人の条件に置くかにある。
国民民主党代表選挙の討論で、外国人の受け入れの基準をめぐって二人の候補の立場が割れた。2026年8月27日にビジネス動画メディア「ReHacQ」が生配信した討論で、玉木雄一郎代表は「日本にとって都合のいい人だけ入れたらいい」と述べ、技能や国籍で入り口を選び、総数を管理する制度が要ると主張した。橋本幹彦衆議院議員は「比率よりは質」として、日本語と所得を基準に置いた。
【ReHacQvs国民民主党代表選挙2026】徹底討論!どうなる?国民民主党
玉木雄一郎代表は受け入れの基準に何を置いたのか
玉木代表が置いたのは、国が入り口で選ぶという基準である。ファシリテーターの須賀川拓氏が、人口減少のなかで労働力をどう確保するのかと尋ねたのに対し、玉木代表はまず人工知能などを使った省力化を徹底すべきだと述べ、そのうえで外国人については「日本にとって都合のいい人だけ入れたらいい」と答えた。
「冷たいように聞こえるかもしれませんが」と断ったうえで、玉木代表はこう続けた。「国家として誰をどのように受け入れるかは、国がちゃんと決めればいい」。高度人材に限る、貢献の度合いを点数化する、といった手法を挙げ、「シンガポールはそれをやっている」と述べた。
シンガポールが就労ビザの審査に用いるCOMPASSは、40点で通過する加点方式だ。給与、学歴、企業内の国籍構成、現地人材の雇用比率など6項目を採点し、学歴では世界大学ランキングの上位100校の学位に20点を与える。玉木代表が「なんとか大学出身だったら何ポイント」と表現したのは、この型の制度を指している。
「総数管理」とは何を指すのか
玉木代表が求めた総数管理とは、分野ごとの枠とは別に、国全体の受け入れ人数を管理する仕組みである。現行制度では、在留資格「特定技能」の受け入れ見込数が分野別に設定されている。玉木代表は「外食は5万人でもうキツキツになるけれど、他の産業分野はまだ空いている」と述べ、枠の配分が実態と合っていないと指摘した。
この点は制度の運用にそのまま表れている。特定技能1号の外食業分野は受け入れ上限が5万人で、2026年2月末の在留者数は約4万6000人に達した。農林水産大臣の要請を受けて出入国在留管理庁は、同年4月13日以降に受理した同分野の在留資格認定証明書交付申請を不交付とする措置をとっている。
玉木代表は「特定技能2号になって家族を呼び寄せるようになったら、今度は逆に何の制限もない」とも述べた。出入国在留管理庁の資料によれば、特定技能1号は在留期間が通算5年までで家族の帯同を基本的に認めないのに対し、2号は更新回数に制限がなく、要件を満たせば配偶者と子の帯同が認められる。玉木代表は分野別の管理を残しつつ、全体の総数も見ながら枠を柔軟に動かせるようにすべきだと述べた。
「10%」という数字は何を指しているのか
玉木代表が挙げた10%は、人口に占める外国人の割合である。「社会の中で外国人の比率は10%を超えると、さすがにいろんな弊害が出てくるとも言われている」と述べたが、根拠となる調査や出典は示していない。
現状の水準は公表されている。総務省の住民基本台帳に基づく人口では、2026年1月1日現在の総人口1億2376万7642人に対し、外国人住民は403万1159人である。前年より9.62%増えたが、全体に占める割合は3%台にとどまる。
須賀川氏は、その10%が全国の話なのか自治体の話なのかを質した。数字で全国をならしてしまえば、外国人が多くても地域社会が回っている自治体と、負担が集中している自治体の違いが見えなくなり、かえって分断を生むのではないか、という問いである。玉木代表は「30%を超えているような自治体も出てきている」と答え、自治体ごとに個別に見る必要があると認めたうえで、全国平均で10%を超えれば軋轢が生じる可能性は確率的に高まる、と述べた。具体的な自治体名は挙げていない。ファシリテーターの中室牧子氏は「きちんとデータを見ながらやった方がいい」と述べた。
橋本幹彦氏はなぜ「比率より質」と言ったのか
橋本氏が基準に置いたのは、人数の多寡ではなく、来る人の条件である。「比率よりは質なんだと思います」と述べ、重視する要素として言語と所得を挙げた。日本語が話せて日本の社会に溶け込もうとする人であれば受け入れるべきで、他国の例にならって収入の要件を設ける手もある、という立場である。「日本のいろいろなものにただ乗りしようということではなく、一緒になって日本社会を作っていこうという方であれば、積極的に受け入れていい」。
橋本氏は現行制度を「いいあり方だと思わない」と述べた。技能実習について「企業からしたら安い労働力ということで受け入れている側面はある」と指摘し、日本人と同じだけ働けるのであれば同一賃金にすべきだとした。技能実習は技能移転による国際貢献を目的とした制度だが、2027年4月1日からは育成就労制度に移行し、目的が人材の育成と確保に改められる。日本語能力の要件についても、特定技能1号では日本語能力試験のN4等で確認するとされており、橋本氏はこの水準の見直しに言及した。
留学生の扱いにも触れた。「日本が好きで、日本を学びたくて来ている人もたくさんいる。それなのに就労制限があって生活が苦しく、結局日本のことを嫌いになって帰っていく」。在留資格「留学」で認められる資格外活動は、原則として1週について28時間以内である。
そのうえで橋本氏は、受け入れの負担の所在を問題にした。国の政策として受け入れても、やさしい日本語での案内やごみ出しのルール、就学した子どもの教育といった課題に実際に直面するのは自治体である。「国策でやるのであれば、実際の負担も国なり受け入れ企業なりが責任を持ってやるべきだ」と述べた。
二人の主張はどこが違うのか
違うのは受け入れの是非ではなく、何を基準に選ぶかである。玉木代表は入り口に基準を置いた。誰を入れるかを国が決め、分野別と全体の両方で人数を管理する。橋本氏は入り口の人数ではなく、来る人の言語と所得という条件、そして受け入れた後の負担を誰が持つかに基準を置いた。
一致した点もある。語学である。玉木代表も「語学の習得は極めて大事だ」と述べ、外国にルーツを持つ子どもが日本語になじめないまま就職も難しくなる悪循環を避けるための支援が要るとした。そのうえで、来てもらうことが本人にとっても日本にとっても意味のある形になるよう制度を作るべきだ、とも述べた。二人とも、日本語を軸に受け入れ後の定着を図るという点では同じ方向だった。
【ReHacQvs国民民主党代表選挙2026】徹底討論!どうなる?国民民主党
◆番組で語られたそのほかの論点
・3:04〜 何を選ぶ選挙か――2028年参院選で野党第一党・40議席という目標
・6:59〜 改革の「センターピン」――インフレ増税か、社会保障・選挙制度改革か
・10:30〜 後期高齢者医療の窓口負担、包括払い、自由診療との組み合わせ
・14:42〜 年金の支給開始年齢と、年金積立金の運用益を使った保険料の引き下げ
・20:41〜 第3号被保険者制度の見直し
・26:11〜 低年金者対策と、福祉的給付・給付付き税額控除の整理
・30:33〜 「玉木党からの脱却」と党の意思決定
・53:52〜 部会の資料は紙のまま――政策決定プロセスの実務
・1:08:37〜 地方からの提案が公約になった例(仕送り控除)
・1:13:30〜 党員・サポーターとの関係をどう設計するか
・1:19:27〜 代表選挙の投票用紙の配送をめぐる混乱
・1:24:41〜 成長戦略――安全保障と産業、成長の三要素
・1:31:43〜 労働市場改革と残業割増率
・1:47:22〜 相互質問――10年後の国民民主党
【よくある質問(FAQ)】
Q1 在留外国人数と外国人住民数は何が違うのですか。
集計する制度が違う。出入国在留管理庁が在留カードなどをもとに集計する在留外国人数は2025年末で412万5395人、総務省が住民票をもとに集計する外国人住民数は2026年1月1日現在で403万1159人である。数字を比べるときは、どちらの統計かを確かめる必要がある。
Q2 特定技能の分野別の受け入れ見込数は誰が決めるのですか。
政府が閣議決定で定める。直近では2024年3月29日の閣議決定で、同年4月から向こう5年間の分野ごとの受け入れ見込数が再設定され、対象分野も追加された。見込数は分野別運用方針に記載される。
Q3 国民民主党代表選挙2026の投票の締め切りと投開票日はいつですか。
郵便投票は9月3日到着分まで、インターネット投票は9月3日24時までで、投開票は9月6日である。8月23日に党公式チャンネルが配信した大阪府での候補者討論会で、代表選挙管理委員が説明している。
関連リンク
・代表と総理を分けるべきか 国民民主党代表選「総総分離」論(Japan In-depth) ※URLの挿入をお願いします
・代表の発信は個人か党か 国民民主党代表選、党運営のプロセスを問う(Japan In-depth) ※URLの挿入をお願いします
・国民民主党代表選 自民党との連立にどこまで近づいたのか(Japan In-depth)
・【ReHacQ】激論!政権担うためどう党改革行う?(玉木雄一郎候補の回)
・【ReHacQ】「解決」より「対決」!?国民民主にしか出来ない政治とは(橋本幹彦候補の回)
トップ写真:橋本幹彦候補(左)、玉木雄一郎候補(右)
出典:国民民主党
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。












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