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.国際  投稿日:2014/9/1

[梁充模]【低迷する韓国経済「チョイノミクス」の効果は?】


 梁充模(経済ジャーナリスト)

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「チョイノミクスがセウォル号沈没事件後に現れた韓国経済のうつ病を解消するなどの効果をすでに発揮した」(ロイター)

グローバルマーケットが7月に就任した韓国の 崔炅煥(チェ・ギョンファン)経済副首相の「チョイノミクス」を注目している。チョイノミクスとは、崔副首相 の 「 Choi」 と 経 済 を 意 味 す る Economicsの 「 nomics」 が 結 合 さ れ た 造 語で、崔副首相の経済政策を意味する。大統領や首相などの最高統帥権者でなく、経済副首長の名前を取ってつけたのは異例のことだ。これまで経済通と評されてきた崔副首相に対するマーケットの期待を示しているのかもしれない。

崔 副 首 相 は 就 任 前 か ら 韓 国 経 済 が 低 成 長 ・ 高 物 価 ・ 経 常 収 支 の 過 度 な 黒 字に 陥 り 、 日 本 の 失 わ れ た 20年 を 踏 襲 す る 恐 れ が あ る と 懸 念 を 示 し た こ と がある。このような不安材料は、マクロ経済の歪曲現象と内需と輸出、家計と企業のいずれもが萎縮する、いわゆる“縮小均衡”となる可能性がある。

実際に、韓国経済は内需の萎縮が構造的になっている。同時に、輸出が成長を 導 く 構 造 が 固 定 化 し 、 グ ロ ー バ ル 経 済 の 環 境 変 化 に 弱 い 。 景 気 低 迷 は 国民所得を減少させ、家計債務はすでに1000兆ウォン(約100兆円)を超えた。少子化と高齢化のため、労働の供給は絶対的に不足している。これまで、内需を 盛 り 上 げ よ う と す る 政 策 は 無 数 に 登 場 し た が 、 大 抵 は 失 敗 し た 。 日 本の過去と酷似している。

チョイノミクスは、アベノミクスと多くの面で似ている。例えば、景気回復を 確 認 す る ま で 、 大 胆 な マ ク ロ 政 策 を 運 用 す る と い う 共 通 点 が あ る 。 そ して 、 内 需 の 活 性 化 が 景 気 浮 揚 策 の 目 標 と い う 点 も 同 じ だ 。 「 経 済 は 心 理 」と い う 命 題 を 貫 い て い る と こ ろ も 似 て い る 。 政 策 を 判 断 す る 際 に 重 要 な のは、数字ではなく心理の変化だ。

アベノミクスの共通目標は投資や雇用、消費が連携する、善い循環の構築であ る 。こ の た め 、 日 本 政 府 は 円 安 を 通 じ た 輸 出 拡 大 と 法 人 税 引 き 下 げ の よう な ア メ を 与 え た 。 企 業 の 投 資 不 足 を 失 わ れ た 20年 の 原 因 と 把握した結果だ。

一方、チョイノミクスは家計のほうに重みを置き、アベノミクスより直接的に 家 計 に 資 金 が 流 れ る よ う に す る 政 策 を 取 っ て い る 。 「 家 計 所 得 増 大 税 制3大パッケージ(勤労所得増大、税制・配当所得増大、税制・企業所得還流税制)」 が 代 表 的 な 政 策 だ 。 賃 金 と 投 資 を 増 や す 企 業 に イ ン セ ン テ ィ ブ を 与 える。ここに、企業が蓄積するだけで使用していない社内留保金を引き出すため の 税 制 政 策 を 備 え た 。 家 計 の 資 産 が 集 中 し て い る 不 動 産 を 盛 り 上 げ る ために規制を果敢に解いたのも同じ脈絡である。

もちろん、人為的な景気浮揚策には限界がある。短期的な総需要の回復にフォーカスを置き、家計債務などの構造的な問題に対する解決策がないというところはチョイノミクスの問題点として指摘されている。

また、 内需の低迷で税収不足の事態が現実化されている状況で、拡張的な財政政策を展開するのは財政健全性を害する恐れがある。これを克服するためには、経済の体質を改善する根本的な構造改革を引き出さなければならない。アベノミクスが莫大な資金を供給してきても「半分の成功」としか言われていない理由がここにある。経済構造の改革に向けた3本目の矢の行方を未だに見当がつかないからだ。

崔副首相の新しい経済チームはアベノミクスの初期のように復興のムードづくりには成功した。しかし、本格的な構造改革なしには100%の成功を成し遂げ ら れ な い 。 今 ま で 打 ち 出 し た 政 策 が 短 期 的 な 浮 揚 策 の 性 格 で あ る た め 、中長期的な構造改革の青写真を描くことができなければ、限界に直面することになりかねない。

 

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