無料会員募集中
.国際  投稿日:2014/10/24

[岩田太郎]【民主党と共和党は同じ穴のムジナ】~サブプライムの復活を目論むオバマ?~米中間選挙リポート②


岩田太郎 (在米ジャーナリスト)「岩田太郎のアメリカどんつき通信」

 

「アメリカの各種制度は富裕層や大企業に有利な八百長になっており、それらを不正に操作しているのは共和党だ!」

「保守派が1980年代に権力を握ったとき、最初にやったことは、金融業界の監視官庁を『クビ』にすることだった!」

「共和党は、ロビイストや弁護士の『大軍』を雇える金持ちや、力を持つ者のために、米国が奉仕すべきだと信じている!」

これを聞いた聴衆は大喝采を送る。

11月4日の米中間選挙の投票日が近づくなか、マサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン民主党上院議員は全米各地で民主党候補の応援遊説をしながら、吼えている。

金髪碧眼のウォーレン氏は同党左派に属する、ポピュリストだ。歯に衣着せぬ大企業批判や弱者救済策の要求で大衆受けがよい。まだ出馬を表明していないが、2016年大統領選挙のダークホース候補になり得ると見られており、民主党中間派から出馬予定のヒラリー・クリントン候補にとっては怖い存在だ。

そのウォーレン上院議員の主張には裏付けがある。現行制度が富裕層や大企業に有利なのも、それを推進したのが共和党であることも、同党が金融の規制撤廃を進め、多額の企業・個人献金を受けていることも、すべて証拠がある。

だが、それは事実の半分でしかない。もう半分の事実とは、規制撤廃や企業優遇政策、そして強者に有利な判決などは、民主党と共和党の共同事業だったのであり、今も続いていることだ。

マサチューセッツ工科大学のサイモン・ジョンソン教授は、「金融市場の規制撤廃は大筋で超党派のプロジェクトだった」と述べ、金持ち・大企業優遇の法文化の形成における、民主党と共和党の協力関係を指摘している。

さらに、最近の米連邦最高裁判所が大企業寄りの判決を連発していることについて、筆者の取材に応じた保守派シンクタンク・ヘリテージ財団のエリザベス・スラッタリー研究員は、「2012年から2013年に企業絡みで審理された33件の訴訟の55%は、民主党のオバマ大統領が指名した2人を含む全判事が一致した判決を出した。最高裁の判決が保守寄りかリベラル寄りかという問題の捉え方は、正確さを欠く」と述べた。民主党政権が指名した判事が、企業優先の判断をすることも多いということだ。

さらに、民主党の政治家は、大企業からの献金を受けている。2012年の大統領選で、米金融業界は共和党のロムニー候補に、オバマ大統領への献金額の3倍の資金を提供した。裏を返せば、オバマ陣営も、共和党より少ないが、ちゃんと献金を受けていたのだ。企業側は政治がどちらに転んでも損をしないよう、手を打っている。

大企業寄りだと反対派が批判する自由貿易協定、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)についても、オバマ大統領は強力に推進する一方、共和党が政敵のオバマ氏に、TPPへの交渉権限を一任するよう活発に動いている。民主党左派は一任に反対するものの、ここでも民主党と共和党が大企業の利益擁護で協力する姿が明らかだ。

翻って、財政出動の自由がないオバマ政権は、景気浮揚のため、2009年の金融危機を引き起こすに至った、審査がゆるい住宅サブプライムローンの復活を目論んでいる。共和党ブッシュ前政権のやり方を踏襲しようとしていると、米メディアで批判を受けている。

このように、「民主党=貧者や弱者の味方」、「共和党=金持ちと大企業の代弁者」という二元論的な見方は、必ずしも事実に即していない。その構図の複雑さを理解することが、11月4日の中間選挙と2016年の大統領選挙の結果、ひいては米国政治を理解・予測する際のカギとなろう。

 

【あわせて読みたい】

[岩田太郎]【米・「民主党でより高い経済成長」に説得力無し】~高い失業率、拡がる格差でオバマ不人気 ~米中間選挙リポート①~

[大原ケイ]【米エボラ熱パニックの裏とは】~国民を恐怖に陥れオバマを追い詰めようとする共和党~

[古森義久]<オバマ大統領 支持率41%、最低水準に>超大国らしい指導権を失わせた米オバマ外交

[藤田正美]【オバマ、イラクに地上軍か?】

タグ岩田太郎

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."