[Ulala]【35人学級を40人の不思議】~日本は学生に何を身につけさせようとしているのか?~
Ulala(ライター・ブロガー)「フランスUlalaの視点」
日本の財務省が「公立校の35人学級を40人学級に戻すべき」との方針を出したことが話題になっている。人件費86億円が削減可能だからと言うのだ。いじめや不登校などで目立った改善が認められず、厳しい財政事情の中での考えらしい。
少人数になると先生の目が届きやすくいじめなどが少なくなると言われているが、単純に考えても例え40人のクラスがたかだか35人になっただけで大きな効果が表れるとは思えない。OECDでの平均が21.2人に比べると、35人でもまだまだ多すぎるぐらいだ。
フランスの公立校でも一クラス25人前後で構成されている。それでも理想は一クラス20人なのでまだまだ多いと言う。一クラス40人のクラスが、20人~25人になれば目に見えて変わってくるかもしれないが、現時点で目立った改善が認められないとするのにはあまりにも短絡すぎるのではないだろうか?
だいたい日本はクラス内の人数が減ることに対して何を求めているのだろうか?
「いじめや不登校の改善?」
「先生の負担軽減?」
「学力向上?」
「きめ細かな対応?」
正直言って、クラス内の人数が少なかろうが多かろうがそこまで学力に差が出るとは思えない。OECDのPISAの結果を見ても、クラス内の人数が少ないフランスは20位台。でも一クラスの人数が多い日本は10位以内をキープしている。基本、学校は勉強するきっかけに過ぎず、フランスにしろ、日本にしろ、学力の高さは自主学習も含め学校外での勉強が功を奏している場合が多いと言えるだろう。
先生の負担は確かに子供が少なければそれだけ減る。クラス内の人数が少ない方がまとめやすく生徒のケアもしやすいだろう。だったら中途半端に35人とせず、減らすのに8年もかけるなら一気に30人にすればよかったのではないだろうか?それは、財政上無理だったのだろうか?
フランスはクラス内の人数も少ないが、点在している小さな自治体ごとの学校が多く、学校自体小さいため、学校の施設も日本ほど揃ってない。私立や人数の多い都市部の学校ではその状況も変わってくるが、大抵の公立校は多少広いホールや広場と、食事する場と教室と言うのが大半だ。校庭もなく、プールもなく、体育館もないので学校外の市の施設を利用する。学校内には理科実験室、美術室、音楽室もないのだ。ボロボロの用具に教科書も貸し出し制。
しかしその状況を見ていると、設備が充実してなくても学ぶことは十分可能なことに気づかされる。あまりにも何もないフランスの学校だが、かえって何もない方がいろいろ工夫したり、ハングリー精神が出てきていいんじゃないかとさえ思えてくる。今までの日本は恵まれすぎて当たり前になっていることが多い。財政だけが問題なら教師の人件費よりも削れるところが他にあるのではないだろうか?
フランスでは日本よりも充実していない教育環境の中でも、自信にみなぎったフランス人が育って行く。その理由の一つが「少人数のクラスだからこそできる、積極的発言の教育」かもしれない。
フランスを含む欧米の授業は子供達の能動的な質問や意見で運営されていて、自分の意見ははっきりと発言し、反対意見もバンバン言う。控えめでいることが身についている日本人には、海外に出るとこれに慣れるまでが大変だ。日常会話なら聞き流しいてもそれでいいが、これが商談や国際会議になると不甲斐なさをはっきり感じるだろう。
こういったタイプの授業をまとめるには人数が多いと難しく、20人前後のクラスが適当だそうだ。だが日本のような発言もあまりしない受動的な授業では、40人のクラスでも問題なかったのかもしれない。
「日本の学校は今後学生に、何を身に着けさせることを目的としているのだろうか?」
どの項目の予算を削減するかはそういった方針を元に決定することが重要なのではないだろうか。子供への教育は、日本の未来を変えるものでもあるので、単純に予算だけに左右される種類の問題ではないと思うのだ。
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