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.国際  投稿日:2014/12/21

[朴斗鎮]【北朝鮮、韓国内の合法的拠点失う】~憲法裁判所、統合進歩党に解散宣告~


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

執筆記事プロフィール

 

韓国政府が請求した左派少数野党の統合進歩党(「統進党」)の政党解散審判で、韓国憲法裁判所は12月19日、同党の解散を宣告した。党所属の国会議員5人全員の議員職も剥奪した。韓国憲政史上、憲法裁判所の決定で政党が解散されるのは今回が初めてである。

韓国法務部は昨年11月に韓国憲政史上初めて、統合進歩党の政党解散審判を請求していた。政党解散審判の法的根拠は、韓国の憲法第8条にある。第8条では「政党は国家の保護を受ける」と明記されているが、その一方で「政党の目的や活動が民主的な基本秩序に反する場合」には政府が憲法裁判所に提訴することができ、憲法裁判所の決定によってその政党に解散を命じることができるとの規定がある。

この憲法条項に基づき、憲法裁判所法第55条では、政党の目的や活動が(自由)民主的基本秩序に背いたとき、政府は国務会議の審議と議決を経て、憲法裁判所に政党解散審判を請求できると規定している。

ことの起こりは、昨年2月に北朝鮮の金正恩政権が第3回核実験を強行し、「停戦協定の白紙化」を宣言、4月末にかけて明日にでも米韓日に核戦争を仕掛けると脅迫したことから始まる。この時、北朝鮮の戦争挑発に呼応して韓国で「内乱」を起こす準備をしていたのが、統合進歩党の李石基(イ・ソッキ52)元議員たちであった。

この「内乱陰謀事件」について審理を行ってきた水原地裁刑事12部(キム・ジョンウン裁判長)は今年2月17日、李議員が、「暴力的な方法によって韓国の体制を転覆させようとした地下革命組織『RO(Revolutionary Organization)』の総責任者として、構成員らと共に内乱を企て扇動した」として、検察の起訴事実を全て認め、李議員に対し、懲役12年、公民権停止10年の判決を言い渡した。現職の国会議員が内乱を企て扇動したとして、裁判所で実刑判決を受けたのは韓国政府樹立以来初めてであった。

しかし、統合進歩党は李石基元議員が昨年拘束された時から一貫して彼を積極的に擁護し除名もしなかった。これで彼らは運命共同体となり、李石基=RO=統進党との図式を自ら立証する羽目となったのである。

この日、朴漢徹(パク・ハンチョル)憲法裁判所長は、午前10時からの審判で、「被請求人の統合進歩党を解党する」とする主文を読み上げた。北朝鮮と対峙(たいじ)している朝鮮半島の状況を踏まえると、脅威がないとは言えないと指摘した上で、「実質的な害悪を及ぼす具体的な危険性があった」と述べた。同党の解散に反対した裁判官は1人で、残る8人全員が賛成した(聯合ニュース日本語版2014/12/19 11:12)。「統進党」と選挙協力した野党にも大きな影響が及ぶのは間違いない。

金正恩は、昨年の狂乱的戦争挑発で強い指導者を演出して、偶像化を図り米韓をねじ伏せようとしたが、その見返りは、中国の離反と父の金正日が精魂こめて作り上げた韓国内の合法的拠点-統合進歩党の解散である。

米韓日に対する核戦争脅迫、張成沢粛清の恐怖政治、ソニー映画に対するテロ脅迫、どれ一つとってもまともなものはない。金正恩第1書記の前途は暗い。

 

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