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経済  投稿日:2015/1/19

[神津多可思]【原油安、日本経済にとってはプラス】~社会保障制度改革とデフレ脱却に腰据えよ~かマイナスか

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神津多可思(リコー経済社会研究所 主席研究員)

「神津多可思の金融経済を読む」

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昨年後半から急落しはじめた原油価格は、あれよあれよと言う間に半分以下になってしまった。これが世界経済全体にプラスなのかマイナスなのか、金融市場は引き続き判断に迷っているようだ。先進国・新興国を併せた世界の合成株価指数というものがあるが、それをみると昨年後半から明らかに模様眺めとなっている。

新興国だけの合成株価指数をみると、昨夏以降2割近く下がっている。原油と並行して、それ以外の商品の市況も全般的に下がっており、それら資源を産出している国は新興国に多い。並行して米国での金利上昇予想もあり、新興国からの資金流出懸念も消えない。そういうことから新興国の株価が全体として下げ基調なのだろう。

他方、国際機関などでは、原油を中心とした資源の価格下落は、輸入国の経済にはプラスに作用するので、全体として世界の経済成長を押し上げるとみる向きがなお多い。ところが、資源輸入国が多い先進国の合成株価指数も、大きく上下しつつも、どちらかと言えば弱含みだ。株式市場はまだプラス面に自信を持てないでいるというところであろうか。

このように先行きに対する不確実性が意識される中で、相対的に安全資産である先進国の国債に資金が流入している。そのため国債の利回りは、多くの国で軒並み最低水準を更新している。日本でも、10年もの国債の流通利回りは0.3%を大きく下回った。これから先の10年で日本経済がどうなるかは非常に不透明であるにもかかわらず、その10年の運用利回りが0.2%台でも良いというのが、言わば現在の日本の国債市場の判断だ。

時期はともかく私達みんなが2%のインフレ期待を持つようになった時、10年間の資金運用の利回りが0.2%台で満足というわけにはいかないだろう。したがって、今後起こることは、「長期金利がインフレ期待に見合うところまで上昇する」か、「インフレ期待が結局は高まらない」か、という二極の中間にある。中央銀行のインフレ期待引き上げへの強いコミットメントからすると、どこかの時点で、長期金利が現在の何倍というレベルにまで上昇する可能性のほうが高いと思ってもよいかもしれない。

世界経済の話に戻す。原油価格下落の影響の他にも、再びギリシャの共通通貨ユーロからの離脱が取り沙汰されている欧州経済の不安定さ、中国経済の減速といった要素もあって、これまで全体の成長期待の下方修正が続いている。それでも米国経済だけは、ようやく非伝統的な金融政策から脱却できそうな展望にあるが、ここでみたような不安定要因から、一人勝ち状況はいつまでも続かないとの悲観論も出はじめている。

せっかく、新しい年に入ったというのに、世界経済は何やらもやもやしている。国際金融危機から6年以上が経過し、この間、調整コストを軽くすべく各国の金融・財政政策において文字通り考えられることはすべて実行されてきたと言ってよい。それらが効果を発揮してきたことも事実だが、各国に大きな財政赤字を残し、国境を超えて短期的に大きくシフトする流動性を生んだ。今度はそれらがまた先行きの不透明感を高めているという点も無視できない。

結局のところ、さっと視界が晴れて、これから進んで行く先がはっきりみえるようになるなどということは期待できないのであろう。バブル崩壊後の日本もずっとそうであった。それでも、すべてが悪いことばかりでもない。手の内の良いカードを大事にして、根気良く過去のツケを解消していく他ない。

日本経済について言えば、原油価格下落も含めたこれまでの経営環境の好転で一息付いた企業は、これからの生き残りのためにポジティブな戦略を打ち出していくはずだ。政府は、短期的に経済の勢いをつけ、税収のトレンドを見極めた上で、高齢化の下でも持続可能な社会保障制度の確立に向けた息の長い取り組みに強くコミットする必要がある。また、20年以上かけて低水準にゆっくりと低下してきたインフレ期待を、じわじわと引き上げていく取り組みも続くだろう。すぐに答が出る話ばかりではない。短気を起こさず、腰を据えて取り組む他はない。

 

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