[相川俊英]【議員に質問させないトンデモ議会】~それでも報酬1000万円超の不思議~
相川俊英(ジャーナリスト)「相川俊英の地方取材行脚録」
地方創生を掲げる安倍政権は様々な取り組みを進めているが、主体となる地方が変わらない限り、成果は期待できない。そもそも役に立たない地方議会を放置したままで地方創生などあり得ない。
今の地方議会は「怠け者の楽園」と化している。議場は果たすべき議員の役割すら理解していない「先生」たちで占拠され、本来の議員活動に真面目に取り組む議員はごく一握りにすぎない。しかも、圧倒的多数派の働かない議員たちは真面目な議員らの足を猛烈に引っ張り、その意欲を削ぐことに懸命だ。「悪貨が良貨を駆逐する」のが、地方議会の悲しい現実である。
地方議会の役割のひとつが、執行機関を監視することだ。その役割を果たす最重要な場面といえば、議場での一般質問であろう。首長ら執行部と対峙し、様々な疑問や意見を直接ぶつけて回答を求める場である。日頃の議員活動の成果を発揮する晴れの舞台であり、議員活動の根幹をなすものと言ってよい。議員の質問の機会を可能な限り認めるのが、本来の議会の姿だと考える。
ところが、一般質問の機会を制限する地方議会が少なくない。執行部側が議員にあれこれ質問されることを嫌がり、質疑応答の場面を少なくしたいと思うのはわかる。隠したいことや言えないこと、言いたくないことがあるからだ。だが、そうしたことを問い質すのが議員の役割で、議会側が質問の機会を制限するのは矛盾した行為といえる。自分たちの手足を自分たちで縛ることに他ならない。
茨城県議会の事例を紹介したい。茨城県議会は議員間である申し合わせをしていた。それは、一般質問できる議員数の制限である。2011年から年間40人に限定していた(それ以前は年間30人)。議員定数は63なので、1年間に1度も一般質問できない、しない議員は3分の1に及んだ。なぜ、40人に限定なのかその数の根拠もなかった。しかも、40人の枠は会派ごとに割り振られるため、真面目な議員ほど「質問したいことがあってもできない」と泣くはめになった。
このため、一部の議員が年40人という人数制限の撤廃を申し入れたが、茨城県議会は1月30日に一般質問できる議員の数を従来通り年間40人にすることを決めた。議員の一般質問の機会を増やすことはないと判断したのである。
執行部に配慮したのか、仕事をしない議員ばかりなのか、質問者の人数制限を続ける茨城県議会の真意は皆目、わからない。ちなみに茨城県議会議員の月額報酬は75万円で、ボーナスを含めれば年間1000万円を大きく上回る。はたしてその働きに相応しい議員報酬といえるだろうか。
おかしな地方議会・議員はなにも茨城県議会だけではない。詳細をご紹介できないのでご関心ある方は拙著「トンデモ地方議員の問題」(ディスカヴァー携書)をお読み下さい。