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.政治  投稿日:2015/2/20

[西村健]【都民の幸せの為に、都は何をすべきか?】~東京都長期ビジョンを読み解く!その4~


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

「西村健の地方自治ウォッチング」

執筆記事プロフィール

中央区晴海を歩くと、高層マンションが増えたことに驚く。中央区民がビルを指さして「1本、2本」(1棟、2棟ではなく)と数えるとも言われる高層タワーを見上げているとふと地面が揺れた。クラクラしたのか、と思ったら地震があったようだ。

東京五輪に向け、開発が加速する「都会のジャングル」は、強靭さと脆弱さが紙一重で同居する。この中で、はたして人はどのようにして個人のしあわせを実感するのだろうか。

長期ビジョンにおいては、都民の実感ベースに立脚した記載は少ない。2つの基本目標、8つの都市戦略といった柱の中には、都民の視点よりも、「都市」としての視点が強調されている。東京五輪を身近に控える現在、そうした構成になっているのもそれは1つのあり方だろう。今回はこれまでと少し違った視点から考えたみたい。

ブータンの国民総幸福度をきっかけに、地方自治体でも幸福度調査を実施するところも増えてきた。広告代理店、研究機関でもそうした指標を検討、研究に取り組んでいる。

法政大の坂本教授のグループの幸福度指数研究では、様々な社会経済統計の中から、出生率、未婚率、刑法犯認知件数、平均寿命など住民の幸福度を示していると思われる40の指標を抽出・加工。さらにランキングし、10段階で点数化し、平均をとって比較している。実施時期は2011年。この研究では、東京都は都道府県において38位と下位に位置する。

博報堂と慶応大の前野教授は、「地域しあわせ風土調査」で幸福度を測定した。人が幸せな人生を送るために必要な心構え・気持ち・行動姿勢、例えば「得意としていることがある」「人を喜ばすことが好きだ」などの10 の質問を指標化、それを「非常によく当てはまる」「少し当てはまる」など5段階評価でスコア化。15,000人対象のアンケートをベースにした研究である。時期は2014年。この研究では、東京都は5位と上位に位置する。

定義、幸せを構成する要素の選択、組み合わせ方、解釈方法など難しさも多い。こうした指標は、数字が先行してしまい、「高い」「低い」などの議論に終始してしまいがち。目先の数字の前に、しあわせとは何か、都民にとってしあわせな状態とはどういった状態か、といった本質的な議論がなおざりになってしまう。

東京都に幸福度調査を行うべきだなどと主張するつもりは毛頭ない。しかし、東京都はどういった姿を目指すのか、都市ではなく、都市に暮らす都民の視点で何を目指すのか、何が都民のしあわせなのかを考えた上で、都民がしあわせを追求してもらうため、都がどういった「役割」をはたすべきなのか。役割議論を「都市政府」に期待したい。

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