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.政治  投稿日:2015/2/21

[文谷数重]【ホルムズ機雷封鎖で集団的保障は必要か?】~現実的な議論しない政治に危機感~


文谷数重(軍事専門誌ライター)

執筆記事プロフィール

ホルムズ海峡の機雷封鎖で、集団的安全保障は必要なのか? 安倍首相はホルムズに機雷が敷設された場合、集団的自衛権による対処となり得ると述べた。だが、集団的安全保障を持ち出す上では、ピントがズレているようにみえる。

■ 3つの状況

ホルムズ海峡に機雷敷設される場合としては、いくつかのパターンが考えられる。首相のいう敷設がどのレベルであるかはよくわからないが、日本向け船舶が利用できなくなる封鎖段階とし、日本による機雷処分を考慮する上では、次の3つのパターンがある。

第1に、敷設国が戦争中に機雷を敷設したと宣言した場合

第2に、その戦争が集結した場合

第3に、どこの国も敷設を宣言していない場合

である。だが、いずれの場合にせよ集団的安全保障は必要ではない。

まず、第1の場合、集団的自衛権は関係ない。中立義務を守るなら機雷除去はできない。日本の生存のために必須なら個別的自衛権でよい。仮に隣で他国と一緒に機雷処分をしても、それは集団的自衛権ではない。

第2の場合、そもそも自衛権には絡まない。戦争終結後の機雷処分は、海の掃除に過ぎず、戦争行為ではない。

第3の場合、除去しても文句をつける国はない。持ち主が知らんぷりする以上、無主物なので除去となる。文句は出ないし、藪蛇なので言わない。84年夏の紅海機雷事件はそれだった。

安倍首相の発言は、ホルムズ海峡をイランが機雷封鎖するイメージなのだろう。イランがアメリカと衝突し、イランがペルシア湾口を封鎖するといった話である。

だが、それは第1の場合に含まれる。日本がアメリカとイランの争いに中立を保つなら文句は言えない。逆に、日本にとって死活的な問題であれば、日本は個別的自衛権を行使するだけの話である。あるいは、イランが闇で機雷を入れたなら、第3の場合に相当するので、機雷除去をしても文句は出ない。

■ 関係するのは上陸戦や、他国港湾の機雷除去

集団的自衛権云々関係する機雷除去は、もっと違った形である。例えば、米国が上陸戦を行うので、海岸の機雷を除去する。あるいは、第三国が米国との戦争状態となり、米軍海外基地に機雷を植えたので、その除去に参加する状況である。

参加すれば日本は相当に外交的得点を稼げる。日本の対機雷戦戦力は外交的な武器である。規模では世界第一位、質も英仏蘭なみに高い。日米同盟の強化のため、能力に乏しい米国に協力できる態勢を作りたい。それならば、集団的自衛権云々もわかる。

しかし、そのような話をすれば、国民は「なんでそんなことまでするの?」と言う。だから、それらしい理由としてシーレーンを持ちだしたのだろう。だが、その結果、集団的自衛権から、かけ離れた話となってしまった。

■ ホルムズ機雷封鎖は現実的か?

そもそも、ホルムズの機雷完全封鎖が現実的かといった問題がある。仮にイランが対米戦のための海峡封鎖を決心しても、国際社会への配慮として安全通路を作る。イランの地先、大砲の届く範囲に通路を作り、先導船を提供して第三国の艦船通航を確保する。そうすれば、日本向けタンカーの通航は確保されることになる。

また、米国も機雷封鎖が完了するまで指を咥えていない。国際海峡への敷設を実施すれば、米国は攻勢的対機雷戦を実施する。イラン敷設艦船を沈め、イラン港湾を機雷封鎖し作業妨害し、陸上の機雷集積地を攻撃するといったものだ。この意味で、議論は前提から現実味がないのである。

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