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.国際  投稿日:2015/2/27

[大原ケイ]【米、ISIL対策泥沼、地上戦へ】~共和党はオバマ大統領に反対一辺倒~


大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)

「アメリカ本音通信」

執筆記事プロフィール

日本でも人質2人が殺害されて「対岸の火事」や「他人事」ではなくなった「イスラーム国/ISIS/ISIL」(呼び方ひとつに色々な議論があるようだが、実際のところそれはどうでもいい)の脅威だが、アメリカではオバマ政権と、保守派共和党が牛耳る国会と、そして国民の総意の間でギャップがあり、どの側面を伝えるかで印象が変わってくる。

オバマ大統領はもともと湾岸戦争、イラク戦争勃発当時に一下院議員だった頃から戦争には反対の立場を取っており、大統領就任とともにイラク戦争の終結、グアンタナモ収容所の閉鎖、アフガニスタンからの撤退を目標に掲げていたが、どれも果たせず、残りの任期も少なくなってきた。

アメリカも既にジャーナリストやNPO活動家を何人も人質に取られ、斬首ビデオが出回っているが、人質を取り戻すために何でもしろ、つまり身代金を払えと言うのは人質の家族しかいない。テロリストと交渉しないという政策を掲げている以上、そのことは了承済みだ。

もちろんISISが脅迫ビデオを公開するたびに激しくこれを非難し、テロに屈しないと繰り返す。危険な場所に出かけて行った者が悪いと「自己責任」などという言葉を使って囚われた人質を批判する人はいない。水面下ではCIAや外交筋を通して交渉もするし、特殊部隊を使った救出作戦も試みているが、表立ってカネで解決する姿勢は一切見せない。この辺の対応が日本のそれとかなり異なる。

だが、ヨーロッパ各国で(事後に)ISISを名乗る者によるローン・ウルフ系のテロ事件が頻繁に起こり、北米本土で同様の事件が起こる可能性が見逃せないものとなってきた。オバマに限らず、米政権が取る道は「Boots on the ground(軍靴を響かせる、つまり空爆ではなく派兵)」しかない。

既にオバマ大統領は米軍最高司令官としてシリア・イラクへの陸上作戦を開始しているが、これに国家予算をいくらかけるのか、軍の規模は何人にするのか、期限を設けるのか、何を持って目標達成とするのか、国会できちんと議論をして決めてくれと要請している。

ところが、オバマ大統領のやることなすこと反対することだけを方針としている共和党は、相変わらず同性婚やマリファナや中絶を違法とするための法案しか出してこない。移民問題も先延ばしにしたままだ。

昨年の中間選挙で上・下院で与党となり、「ねじれ」を解消した共和党だが、伝統的に、どんなに平和な世界が訪れようともアメリカが軍事費削減なんてとんでもない、と考えるタカ派が主流である。だが、軍事産業でボロ儲けしたブッシュ政権の側近のネオコンたちとは別に、お茶会と呼ばれる超保守派は、ISIL(イスラーム国)のテロとの戦いを「聖戦」と呼ぶことに躊躇しておらず、それこそテロリストの思うツボにはまっている。

彼らは昨年末に公開された映画『アメリカン・スナイパー』を絶賛し、結局はろくな学歴も仕事もない兵士として戦地に赴くのは自分たちなのだが、イスラム教徒どころか、黒人もヒスパニックも、極めてマイノリティーのいない「ディープサウス」と呼ばれるアメリカの南東部では、イスラム圏が抱える問題は「他者」のそれでしかない。

一方で、東西海岸部のリベラルな都会に住むアメリカ人をも合わせたコンセンサスはどこにあるかといえば、やはり、シリアとイラクへのさらなる派兵は免れないという意見が盛り上がっている。それと同時に、ISISの他にもアル・カーイダやボコ・ハラムといったイスラム教を名乗るテロ団体を生み出していったそもそもの元凶が9.11を口実にサダム・フセイン政権を排除したジョージ・W・ブッシュ政権であるのは、少しでも宗教や歴史を正しく認識している米国民であれば理解しているところであり、このことが次の大統領選挙で有力候補とされている弟のジェブ・ブッシュのアキレス腱となることは必至だろう。


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