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.政治  投稿日:2015/3/3

[相川俊英]【長野県の1地方議会に改革の芽】~住民による「政策サポーター制度」~


相川俊英(ジャーナリスト)「相川俊英の地方取材行脚録」

執筆記事プロフィール

 

全国の自治体で来年度予算案を審議する地方議会が開会中だ。国会のようにテレビ中継されないので、直接、足を運んで傍聴してみることをお勧めしたい。きっと議場での空疎なやりとりに唖然とし、迫りくる眠気との攻防となるはずだ。それでも「百聞は一見に如かず」である。我が町の議会・議員の等身大の姿を知ることは意義深い。執行部と丁々発止の議論を展開する光り輝く議員に遭遇するかもしれないし、あの号泣県議クラスの逸材?に出くわすかもしれない。

地方議会の役割はチェックと政策提言とされているが、お寒い現実が広がっている。単なる追認機関でしかなく、政策提言などとてもとてもというのが実態だ。それどころか議員の発言回数を制限するお粗末な議会も少なくない。だが、本来の役割を果たそうと様々な取り組みを重ねている地方議会もある。その代表的な事例が長野県飯綱町議会だ。

飯綱町議会は2008年から議会改革に着手した。正確に言うと、着手せざるを得なくなった。町の第三セクターが破綻し、住民から議会の責任も厳しく追及されたからだ。役立たずと罵声を浴びた議員は皆、追認機関から脱して町長と切磋琢磨する議会に変わらねばとの危機感を募らせた。政策提言のできる議会を目標に掲げ、改革の道を踏み出すことになったのである。

まずは住民に信頼される議会・議員に変わるための努力を重ねた。その第一歩として議員の方から住民の中に深く入り込み、生の声に耳を傾ける機会を多く設けたのである。

そうした過程で生み出されたのが、「政策サポーター制度」だ。議員15人は年配者ばかりで、給与所得者や商工業者はゼロ。どうみても町民の縮図とはなっておらず、物の見方や捉え方の偏りが否めなかった。そこで住民にサポーターを募り、協働で政策作りすることを発案したのである。仕組みはこうだ。

テーマを絞ってサポーターを公募や要請で集め、平日の夜間に会合を開く。サポーターには日当3000円が支給される。議員とサポーターが話し合いや調査研究を重ね、そのうえで議員が政策提言書にまとめ上げるのである。それを町長に提出したり、議員提案での条例化を実現させるというものだ。住民目線での政策立案であり、執行部の発想では生まれにくい新たな施策が実現するようになった。すでに議員提案による条例も制定されている。

こうした住民との協働による政策立案を行うようになり、飯綱町議会にいろんな変化が生れている。他の自治体議会とは一味も二味も違ったものになっている。例えば、飯綱町議会には会派はない。議員個々に与党、野党の違いはなく、皆、執行部と是々非々の関係を保っている。また、議会での発言回数に制限がなくなり(以前は3回まで)、どの議員も活発に発言するという。議員同士が切磋琢磨し、よく学び、自由な討議を重ねているのである。それが飯綱町議会の最大の特徴だという。こんな地方議会もあるのかとびっくり仰天した次第である。

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