山田厚俊(ジャーナリスト)
「山田厚俊の永田町ミザルイワザルキカザル」
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♪今 別れの時 飛び立とう 未来信じて はずむ 若い力 信じて この広い この広い 大空に……
体育館に、迫力あるオーケストラの生演奏と透き通るソプラノボイス、そして瑞々しい子どもたちの合唱の声が響き渡る。卒業式の定番ソング「旅立ちの日に」の一節だが、これは卒業式ではない。3月4日、西東京市立碧山小学校で開かれたスペシャルライブの一コマだ。
「このような場所で子どもたちと一緒に発表会形式でやるのは初めてです。皆が楽しめるように頑張ります。」
開演前こう語ったのは、“海自の歌姫”として知られる三宅由佳莉。海上自衛隊東京音楽隊所属のソプラノ・ボーカリストで、れっきとした海自3曹だ。三宅が話題となったのは、2013年発売のアルバム『祈り~未来への歌声』が日本レコード大賞企画賞など3賞を受賞し、“美しすぎる自衛官”として注目を集めたからだ。
<写真:熱唱する三宅由佳莉さん>
その三宅がこの日、セカンド・アルバム『希望~Songs for Tomorrow』を発売するにあたり、スペシャル・ライブを企画した。発売元のユニバーサルミュージック担当者はこう振り返る。
「1カ月ほど前、発売がちょうど卒業式シーズンに重なることもあり、学校でやってみたいという声があがりました。」
しかし、複数の学校に当たった結果、ようやく碧山小が受けることになったという。碧山小側はこう語る。
「地元の交響楽団の方から話をいただき、最初は吹奏楽部との共演ということだったのでいい経験になると思い、了承しました。」
学校側としても「旅立ちの日に」を練習していた矢先の申し出だったことが、功を奏したようだ。ところが、打ち合わせを進めていくうち、「それなら合唱もしましょう」「全校生徒を集めて聴いてもらいましょう」と、企画がどんどん膨れ上がっていったのだという。
かくして、新曲「希望」をはじめ、収録曲「旅立ちの日に」「Let It Go~ありのままで~」など全5曲を演奏するスペシャルライブが“特別授業”という形で開かれた。体育館には全校生徒546人が聴き入った。また、冒頭のシーン「旅立ちの日に」では、吹奏楽部25人も演奏に加わり、6年生2クラス55人が合唱に参加した。
「子どもたちは帰宅後も興奮して親御さんたちにライブの話をしたそうです。いい思い出になったと思います。」
学校側も安心感と満足感に満ち溢れたようだ。やるせない事件が相次ぐなか、音楽によって心を豊かにする“教育現場”が増えていくことを願って止まない。