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.国際  投稿日:2015/3/9

[安岡美佳]【駐車場で“ポカ”を無くす工夫】~デンマークの「人を幸せにする仕組み」1~


安岡美佳(コペンハーゲンIT大学 研究員)

執筆記事

デンマークは幸せの国ランキングで、トップの常連だ。「幸せの国」といっても、日本人にとって幸せかどうかはまた別問題だと思うので、デンマークが幸せかどうかについてはまた別の機会に譲ろうと思う。ただ最近、生活の様々なところで“ストレスなく暮らすための工夫”が次々生まれてきていると感じることが多い。

社会に広がっているそれらの細かい工夫の積み重ねが今の私の毎日の生活をスムースにしてくれていることは確かだ。それは、デンマークの社会の仕組みを完全に理解しているわけではない自分にとって、間違えをなるべく避けることができる仕組みとなっている。デンマークに住んでいて感じるそんな工夫、すなわち、“幸せをもたらすシステム”について今回は語ってみたいと思う。

デンマークには、「パーキング時計」(写真)なるものがある。欧州に住んだことのある人なら馴染みがあるんじゃないだろうか。針が一本しかない時計の形をしていて、車のフロントガラスにくっつけて使う。多くはプラスティックで出来ていて、パーキング時間が決められているエリアで利用する。子どもが時計を学ぶ時に使うような、針を手で動かすようになっているアレだ。

街中には、無料で2時間駐車が可能なエリアや、30分駐車が可能なエリアなどがある。多くのスーパーは1時間まで無料などとしているのだが、重要なのは、車を駐車した時間に時計の針を“手動で”合わせておくことだ。もし合わせ忘れて、駐車した時間より前の時間を針が示していたら、駐車違反と見なされ、高額の罰金が課せられてしまう。コペンハーゲン市内では,平均510-900デンマーク・クローネ(1デンマーク・クローネは約18円)程だろうか。たかが10分ほどの、もしかしたら緊急におむつを探していただけの買い物なのに、時計の針を合わせ忘れただけなのに2万円弱の罰金は痛すぎる。

ところが、最近私がよく行くコペンハーゲン市内のショッピングモールでは、3時間の駐車が無料で、入場の際にはクレジットカードに入場記録が登録され、駐車場から出る時に3時間を超過した分がカード払い清算となるシステムを採用している。

直接カード清算されるから、入場の時に「パーキング時計」を合わせる必要もないし、3時間を計る必要もなく、非常に便利だ。通常は日常の買い物に3時間使うことはないので、無料で駐車できるし、「パーキング時計」を設定し忘れて高額の罰金を取られるなどということがなくなった。

ハイテクでも何でもないけれど、こうしたちょっとしたシステムの工夫によって、人々の暮らしはずいぶんと便利になり、それが「幸せ」を感じることにつながるのだと思う。

(3月10日11:30配信、[安岡美佳]【ITサービスで必要な“心地よさ”】~デンマークの「人を幸せにする仕組み」2~に続く。このシリーズ全2回)

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