[磯村かのん]低価格・迅速・多様なオプションを持つ『不妊治療ツアー』で人気な国、スペイン
磯村かのん(ライター・通訳・起業家)
「スペイン」と聞いて皆さんは何を連想しますか?
情熱の国、フラメンコ、闘牛、パエリア、サッカーなどが一般的に知られていますが、実は不妊治療ツアーも有名です。スペインは他の欧州諸国に比べ、あまり待たずに第3者の卵子を使って体外受精をすることができます。特に欧州人と中米/南米人の卵子は豊富で、精子の提供を受けることも、代理母での出産も可能です。
ベルギーやイギリスでも第3者の卵子を使って体外受精をすることは可能ですが、スペインの方が低価格で、不妊治療に対して様々なオプションが取り揃えてある事が人気の理由となっています。
欧州では卵子提供の法律が国によって異なります。例えば、ドイツ、オーストリア、イタリアでは卵子の提供は違法。フランスでは報酬を受けないボランティアのみ卵子の提供が合法なので、卵子の在庫が少ない為に約2年待たないと提供が受けられません。
あまり知られてはいませんが、卵子提供って結構面倒です。まず、卵子の成長を促す注射を約7日間、卵子の成長を止める注射を約3日間、決まった時間に打ち、その期間は毎日婦人科で膣内のエコー検査を受け、できる限り沢山の卵子が成熟した時期を見計らい、全身麻酔で卵子の摘出をします。
摘出された卵子は凍結され、その後、体外受精の為に融解(解凍)されるのですが、このプロセスの途中で卵子の質が落ちるので、原則として健康な若い女性(35歳以下)の良質な卵子でないと提供できないようになっています。卵子提供は精神と体に多大な負担を与え、またリスクも伴うが故にそう簡単にできる事ではないのです。
しかし、スペインではボランティアの卵子提供者に礼金(約2000€、約27万円)を支払う制度があるので、提供者の多くは学生や不法就労者となっています。礼金目当てに卵子提供を繰り返す人が後を絶たないので、卵子の質を疑問視する声がありながら、このような仕組みで卵子の在庫数を保ち、スペインは不妊治療ツーリズムのデスティネーション(目的地)となっているのです。
【あわせて読みたい】
- 学ぶことも働くこともできない128万人の若き失業者たち〜大学在学者は失業率にカウントすべき?(高橋秀樹・放送作家)
- [現役女子大生・留学リポート]三木絵未奈の“異国の地で日々、奮闘中!(1)
- 「風立ちぬ」の恋愛描写とジェンダー(渡辺真由子・メディアジャーナリスト)
- 母親の、母親による、社会のための活動〜母親の起業をいかに「母親と社会との接続」が達成させるのか(江藤真規・サイタコーディネーション代表)
- [特集*女性執筆者①]女性とキャリア〜Japan In-Depthの女性執筆者の特集第一弾。(水野友貴・原田さとみ・白木夏子・江藤真規)