[宮家邦彦]【“シンガポールの奇跡”は続くのか?】~リー・クァンユー亡き後“力の空白”を懸念~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2015年3月23-29日)」
遂にシンガポールの巨星墜つ。リー・クァンユーのいないシンガポールはチトーのいないユーゴスラビアか、それとも毛沢東死後の中国となるのか。筆者の個人的体験から言えることは、それは中華系シンガポール人にとっても難しい判断ということだ。勿論、最初の数年は心配していない。だが、その後は未知数だろう。シンガポール独立前の状況に戻れば、同国の奇跡は終了するのだが、それは誰にとっても利益ではないだろう。シンガポールが不安定化するとすれば、それは同国民の意志に反して起きる、ということになる。個人的にはシンガポールでの力の空白は中国が埋めかねないと心配になる。それを日本が座視することは許されないはずだが・・・。いずれにせよ、今後とも要注意だ。
〇欧州・ロシア
23日に独首相がギリシャ首相と会談する。ギリシャ金融問題を救うにはドイツの協力が不可欠だが、ドイツの対応が気になるところだ。EUが欧州の政治統合を目指すなら、ドイツの譲歩が不可欠だが、メルケル首相はそれで持つのだろうか。
ロシアでは23日に同国の製鉄会社Novolipetskとダイヤモンド会社ALROSAの2014年第4四半期決算報告を、25日には同国の水力発電会社RusHydroの2014年決算報告をそれぞれ発表する。ロシア経済はどうなるか気になるところだ。
〇アメリカ両大陸
23日に米国の国務長官、国防長官、財務長官がキャンプデーヴィッドでアフガニスタン首脳と二国間協議を行う。ちなみに大統領は何をしているのだろう。24-26日にはロシア外相がキューバ、ニカラグア、コロンビア、グアテマラを歴訪する。
〇東アジア・大洋州
22-24日にNZ首相が韓国を訪問しFTAに調印する。23-25日には自民党、公明党両幹事長が訪中する。更に、26-29日には高村自民党副総裁が訪米し、二階自民党総務会長が訪中する。これらは安倍政権の対米、対中姿勢を占う上で要注意だろう。
23日からはインドネシア大統領が訪日・訪中する。同国の新大統領が安全保障よりも経済の方に関心が高いらしいことは気になるが、26日からはボーアオ・フォーラムも開かれる。これから8-9月に向けて日中間の水面下の駆け引きが活発になるだろう。
〇インド亜大陸
25-29日にパキスタンの国境警備隊代表団がインドを訪問する。ヘッドは局長級でレベルは低いが、この種の対話を続けることは結構なことだ。今週はそれ以外に大きな動きはない。
〇中東・アフリカ
23日にエチオピア、エジプト、スーダン三国によるナイル川の水利用に関する合意がハルトゥームで調印される。28-29日にはアラブ連盟首脳会議がエジプトのリゾート地シャムエイシェイクで開かれる。それにしても、イラクのティクリート攻防戦は一体どうなったのだろうか。気になるところだ。先週述べたとおり、これがイラクにおけるイランの権益拡大となれば、状況が良くなるはずはないのだが・・・。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。