[渋谷真紀子]日米でチームワークの考え方に大きな違い!? 〜元広告ウーマンが感じた日米チームワークのギャップ
渋谷真紀子(ボストン大学院・演劇教育専攻)
ボストンでは初雪が降り、厳しい冬が始まりました。これは以前訪れたモスクワより寒いかも!?です。
さて、私が学んでいる演劇教育は、ペアやチームワークが基本です。授業の他に、学部内で選抜された17名のプロダクションで10程度の小学校でツアー公演。私はワークショップの責任者として、プラン立案とファシリテーションをしました。このような物事を作り上げていくプロセスは、以前広告代理店の営業としてやっていた「チームワークを最大化させて、心を動かすものを生み出す」ことと共通点を感じる一方、日米に於ける「チームワーク」の考え方のギャップを痛感しています。
日本でのチームワークは、皆で粘り強く取り組み、ある種多くの時間を共有することで、団結力も高まり、皆のおかげでここまで出来ました!と感じたもの。個人の力にばらつきがあっても、皆で力を合わせて達成しようという意識があります。
一方、ここでは個々がベストのパフォーマンスをすることがチーム全体への貢献という印象が強いです。打合せは、アイディアを揉むというよりは、各々のタスク確認・そこからベストを選択し、全体のコンセンサスを図ることが目的。各々がベストなものを持ち寄るのが前提の為、改善点を話し合う際は、他者にダメ出しをすることは余り無く、全体的に改善するために自分はこうするという意見になり、個人力の集合がそのまま団体力になっている感じがします。団体力で仕上げる日本と、個人力をまとめるアメリカという違いです。
冒頭のプロダクション公演で度々これを痛感しています。
私達は、劇を制作・公演するArtistチームとワークショップを制作・実施するEducation チームで構成されています。準備を進めると全体が集まる機会は一度もなく、各々の役割がある時間だけコミットすればよし。公演後のワークショップは、Artistチームは基本的に帰る。
最後の公演にはワークショップが無かったものの、私はグランドフィナーレを共有したい!と思い、公演の手伝いに行ったところ、「ワークショップやらないのに来たなんて、how sweet!」と驚かれました。役割がないのにきたのは私だけ(笑)。日本では、特にやることがなくても、手伝えることを見つけて朝から晩までいることを当然と思っていたので、驚きでした。
広告代理店の営業で濃密な打合せをしていた私にとっては、皆で切磋琢磨して誰のものでもない皆のものにしていく深みが無いところに寂しさを感じることもありました。米国式の効率重視・個の重視は、責任も明確で、時間を上手に使えるなど良い点もたくさんありますが、時間を共有することも大事なチームワークの要素と思っていたのでカルチャーショックでした。
今後、演出家として如何にしてリードしていくかは大きなチャレンジです。効率のよいリハーサルも大きな評価基準となり、チームのモチベーションに大きく影響するとのこと。個人の最大限のパフォーマンスを引出すことと、日本のお互いに高め合い一体感を生み出していくチームワークを、限られた時間の中で達成する、そんないいとこ取りを実現していきたいと思います。
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