[相川梨絵]【サイクロンから学び、復興する農業】~台風直撃のバヌアツ事情 2~
相川梨絵(フリーアナウンサー/バヌアツ共和国親善大使)
「相川梨絵のバヌアツ・ニュース」
バヌアツは、国民の多くが半自給自足の生活をし、ローカルマーケットでそれらを売って生計を立てています。今回のサイクロンで、彼らの台所「畑」が壊滅的な状態です。街には、いくつかマーケットがあります。地元でとれる色とりどりの野菜、フルーツ。すべてが無農薬のオーガニックでした。しかし今は、マーケットに人はいません。自分たちの食べる分さえ、なくなっています。農林水産省、デイビット・トッスル大臣に話を聞きました。現在、食糧や水を村に支給し、168,000人に行き届いています。そして、向こう一か月の食糧は確保しているとのこと。これは、すべて海外からの援助です。
日本からも乾パンなどが送られる予定です。また、幸いにもサント島など北部の島では、被害が少なかったので、これらの島から被害の大きい南部の島へ野菜の輸送なども始まっています。ただし、輸送費もかかり、値段は高いです。
もう一つの援助として種があります。ニューカレドニアから野菜や果物の種、1億円相当が送られました。パパイヤ、スイカ、かぼちゃ、コーン、トマト、青梗菜など、バヌアツで育ちやすく早く実がなるもの、またバヌアツ人が好むものがセレクトされています。
今は、緊急的な食糧支援が先決ですが、中長期的には、この種を配り、実がなるまでに早いもので2~3か月。まずは、自分たちの食事を確保し、その後、マーケットに野菜が並び、村に収入が入るまでに6か月~1年かかるという見通しです。
しかし、バヌアツの生産高トップのコプラの原料になるココナッツは、実がなるまでに4~5年。また、ナタンゴラの木は、葉を編んで家の屋根に使われていたのですが、植物が育つまで2~3年、葉が屋根に使えるようになるまでさらに3~4年かかるそうです。
今回のサイクロンでほとんどの家が屋根にタメージを受けたので、家が元に戻るまでには、相当な時間がかかることが予想されます。サイクロンの教訓を生かして、今後の対策を聞いてみました。
①家に関しては、現在使っている木の質が悪いので、良い木を使うことを推奨する。
②魚の養殖を始める。
③食糧の貯蓄がないので、米やキャッサバ粉など、加工品を生産する。
④タロイモやヤムイモなどイモ類に関しては、サイクロン前に茎を切っておく。
実は、サイクロン前に茎を切っていた場所とそうでない場所では明暗が分かれました。今回のサイクロンでは大木も根こそぎ倒されています。しかし、この処置をしたイモ類は地中にしっかりと残り、今の彼らの貴重な食糧となっています。これは、昔ながらの知恵。そして、バナナの木も、切り落とした部分から、既に新たな葉が成長しています。
茶色く変わってしまったバヌアツの大地は、日差しを浴び、雨を受け、日々、驚く早さで緑が成長しています。バヌアツの生命力の強さを実感しています。
※トップ画像/切り口から新たに成長したバナナの木