[相川梨絵]【島嶼国、中国の経済外交に不安】~バヌアツからみた日本に対する期待~
相川梨絵(フリーアナウンサー/バヌアツ共和国親善大使)
「相川梨絵のバヌアツ・ニュース」
新年あけましておめでとうございます。バヌアツ共和国はキリスト教徒が多いので、クリスマスは盛大にお祝いするのですが、お正月は何とも素っ気ない。一応、挨拶で“HAPPY NEW YEAR”を交わしますが、後は、平日と何ら変
わりがありません。日本のおせち料理や初詣など情緒があっていいですね。
さて、昨年は、ここバヌアツで日本の無償援助による病院完成という大きな出来事がありました。しかし、一年を振り替えてみると、常に新聞にはチャイニーズの文字が踊っていたなという印象です。日本の記事を見かけることは稀でした。
そんな中、年末に久しぶりに日本の記事を見つけました。それは、「安倍政権 再選」のニュースです。この記事をバヌアツ人はどう見ているのか気になり、友人でバヌアツ共和国の初代大統領のジョージ・ソコマヌ氏に聞いてみました。
彼は、独立当時の大統領で、ダイアナ妃の結婚式への出席にはじまり、マンデラ、カストロ、ムバラク、田中角栄、などなど歴史に名を残す要人たちと直接会談を果たした人物です。日本にも洞爺湖サミットを始め6回訪問している親日家。
そんな彼に、そもそも安倍首相を知っているのか?聞いてみました。これには、YES.でした。しかし、残念なのは、個人的な知り合いではなくニュースなどで知っているというものでした。
印象を尋ねると、リーダーシップがあると思ったそうです。ソコマヌ氏はとてもシンプルに物を考えます。安倍首相が3回選挙で勝っているということは、それだけ、国民が安倍首相のリーダーシップを買っているからだと。
続いて、経済政策や原発の問題など、日本の体制をどう思うか聞いてみたのですが、これは、日本の問題であるという回答。国民が、安倍首相を選んだのだから、それは、国民の選択だと。私たちは、揚げ足を取るかのごとく、常に政策のマイナス面を報道し、政治家を批判し続けているような気がします。これがすべて悪いとは言いませんが、しかし、彼らを選んだのは私たち。自分たちの責任でもあることを忘れている気がしました。
またソコマヌ氏は、「日本の援助は全世界の1%しかない。病院の建設までに10年かかった。日本は慎重で議論をたくさん交わしてすべてがクリアーになってから初めてGOがでる。今のバヌアツは中国より日本が遠くなっている。多くのプロジェクトを中国が進めている。」と述べ、最近中国が加速している経済外交に触れ、日本の援助の意思決定の遅さを指摘しました。
一方で、「バヌアツ政府はメインテナンスに注意しなければならない。実際に中国が建てた国会議事堂で地盤沈下が起きた。今、中国は色々なところにお金をばらまき、建設をしているが、10年後にそれらが老朽化した時、誰がそれをなおすのか。」とも述べ、中国のインフラ支援の今後に不安も覗かせました。
さらにソコヌマ氏は、「安倍首相にはバヌアツに限らず、太平洋の諸国に直接来て、何が必要かを見てほしい。そして、もっと太平洋諸国の小さな島々にもヘルプをしてほしい。日本のリーダーは世界のリーダーなのだから。我々は、日本も中国ともよい関係を保ちたい。」と述べ、日本が太平洋の島嶼国に対し一層の支援を行うことに対する期待感を示しました。
そして、最後にこんな言葉を頂きました。
「日本は世界で唯一原爆を落とされた国。何もなくなった後に、テクノロジーだけで立ち上がった。すべての国はそれをみている。そして、私たち途上国はそれをお手本にしようとしている。日本は2度と戦争をしない。日本はその姿勢を守るべき。」
日本をリスペククトするその言葉。これこそ、私たちが誇りにしていいものです。さあ、2015年の今年は日本の円借款による国際埠頭の建設が始まります。これによって、バヌアツの経済が活性化されるのは明らかです。これを機にもっともっと、日本の存在感を示してほしいです。
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