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.政治  投稿日:2013/12/8

[清谷信一]民主主義・法治の危機〜国家安全保障会議(日本版NSC)と特定機密保護法は警察官僚に支配される(1/2)


清谷信一(軍事ジャーナリスト)

執筆記事プロフィールWebsiteTwitter

 

「国家安全保障会議」、いわゆる日本版NSCを創設するための法律が11月27日の参議院本会議において賛成多数で可決され、成立した。また関連する「特定秘密保護法案」も12月6日に成立した。

日本版NSCや機密の保護などの情報力の強化は安倍首相の宿願であり、自民党が強く推してきたことでもある。確かに我が国に情報力が弱く、機密が駄々漏れの状態であり、このような組織が必要だ。筆者も基本的には日本版NSCや特定秘密保護法のような法律は必要だと長年説いてきた。

我が国では国会で秘密会議すら開くことができない。午前中に会議を開くと午後には情報が駄々漏れになる。情報に関する我が国の状態はお寒い限りだ。だが、せっかく作る日本版NSCは警察官僚の支配を強め、国民を抑圧するものになる危険性が極めて高い

筆者はこれまで防衛省の「不都合な真実」を多数暴き、報道してきたが今後取材活動に制約がでる可能性ある。また取材に法的に問題がなくともあたかも違法であるかのような容疑を掛けられ、逮捕される可能性がある。日本の警察はそれを意図的にやりかねない。筆者が日本版NSCや特定秘密保護法に反対するのは警察官僚、正確にいえば公安警察官僚に牛耳られるであろうからだ。警察官僚の組織は民主国家としては異様なほどに強大で国家の情報を独占している。しかも遵法意識が極めて低い。

現在、政府の情報機関はほとんどが警察官僚の支配下にある。これは民主国家とは言えない状況であり、その警察は力を背景に法を曲げることを厭わない組織でさえある。日本版NSCと特定機密保護法は警察官僚に更なる武器を与えることになる。いくら素晴らし組織や法律を作っても、それがねじ曲げられて運用される可能性が高いのだ。

日本でもっとも強力な情報機関は公安警察だ。警察官僚は大きく分けて公安と刑事に分類できるが、出世して権力を握っているのは公安である。内閣情報調査室にしても警察官僚に牛耳られている。法務省公安庁は多数の出向者を警察庁から受け入れている。

しかも、我が国には他国と異なり、実は実質的には地方警察が存在しない。我が国には米国のFBI(アメリカ連邦捜査局)や欧州などの国家警察と同様な全国をカバーする警察が存在しない。対して警察庁と都道府県警察という地方警察のみである。警察庁には実働部隊がまったくなく、一見すると地方警察しか存在しないように見える。これら地方警察はタテマエの上では知事の下にある公安委員会がこれを管理し、警察は地方自治に任されていることになっている。

だが、これら地方警察の上層部の幹部職員は恒常的に警察庁からキャリア組が派遣されている。地方警察の警察官でも警視正以上の階級は警察庁に属する国家公務員であり、それ以下は階級の警察官は地方公務員である。つまり地方警察は人事によって警察庁に間接支配されている。

軍隊でいえば将校は警察庁に属し、下士官兵は地方警察に属するといういびつな組織だ。つまり我が国ではすべての警察組織は警察庁を頂点とする巨大なピラミッド組織であり、地方警察は存在しない。フランスやロシアよりも警察の組織は強大だ。

自衛隊も長年警察官僚の支配を受けてきた。自衛隊は元々、警察予備隊として設立されたという経緯もあり、極力旧軍の将官や高級将校が排除され、内務の流れを汲む警察官僚が内局を独占していた。そして未だに防衛省では警察官僚が重要なポジションを占めている。かつて小池防衛相は天皇と呼ばれた守屋次官の後任に警察庁出身の西川徹矢官房長提案したことは記憶に新しい。【(2/2)へ続く

 

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