[角谷浩一]衆院であっさりと可決した特定秘密保護法案
角谷浩一(政治ジャーナリスト・映画評論家)
今国会の最重要法案、特定秘密保護法案が衆院の委員会であっさりと可決した。官邸筋は言う。
こういうやり型での採決は最悪のシナリオでもあった。もう少し首尾よく成立させたかった。
国民の知る権利を規制して、官僚と政治が秘密を守ろうという法律は国民不在、中央公聴会すら開かず、福島市で行われた地方公聴会では懸念が噴出。9月3日に募集開始したパブリックコメントは同月17日に締め切り。約9万件のうち77%が反対意見だった。新聞社の世論調査でも反対意見や慎重論が多かった法案は結果、今月17日審議入り。20日間の審議で衆院を通過したことになる。
野党幹部が言う。
今後の憲法改正での協力関係を考えれば、日本維新の会が訴える慎重審議に官邸は協力するとみていた。内々で調整していた延長期間は3日間。それで維新が賛成するなら野党分断は成功。事実上野党共闘路線は崩れ去る。維新も延長させ与党案に大幅に変更を加えたのだからメンツが立つというものだった。ところが突如官邸は延長を拒否したのではないか。
ことの真意はわからない。ただ、維新は対応を間違えて官邸から捨てられたのか、それとも官邸が延長したくない事情から維新切りをしたのかはやぶの中だ。
「最大のポイントは与党だけでも人数は足りていて成立する法案に野党を大きく巻き込んだこと。今後は保守系野党がまとまろうとして民主、維新、みんなの一部の合併の話に突き進むだろう。彼らは与党とパーシャル連合を結び、与党的野党になっていくだろう。所詮第2自民党でしかないのに、保守系政党と言い張るだろう。与党は使えるものは使い、使えないものは使わない。使い捨てを承知で下駄の雪のようについてくるのなら使い道はある。思い出してみろ。細川、小沢、小泉と渡り歩いた元防衛相・小池百合子は今や閑職だ。野党から来た外様は安全保障をやりたがる。それが保守政党の基礎だと見えるのだろう。だが、そこまでで切られる。第2自民党の諸君も防衛相をやって使い捨てだ」(自民党中堅議員)。
これが与野党の権力闘争か。
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