【港区議会、第2会派を議会ポストから締め出し】~東京都港区議会、代表者会議決裂~
安倍宏行(Japan In-depth 編集長/ジャーナリスト)
「編集長の眼」
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5月18日、4回目の港区議会代表者会議が行われた。11日、13日、15日に続くものだ。その場で、議会ポストの配分は従来のドント方式から選挙で選出することに決まった。すなわち、10人からなる第2会派は議会の主要ポストから締め出されるということだ。第2会派「みなと政策会議」10人の代表は先の選挙でトップ当選した清家あい議員(民主党)である。(注1)何故そんなことになるのか?何回代表者会議を傍聴しても理解に苦しむ。自民、公明、共産の各会派はこれまで議会の中で信頼関係を築くために努力を続けてきたが、それを壊すような議員が新会派の中にいるがために、これ以上信頼関係を築くのは無理、としてドント方式に代わり選挙を主張して来た。結局、「みなと政策会議」側は自公共の主張が最後まで理解出来ないとして話し合いは決裂したというわけだ。というか、はなから双方に一致点はなかったような気がする。
議会の主要ポストから締め出されることになったことについて「みなと政策会議」は、今後は堂々とモノを言える会派を目指す、としている。選挙になったことで、自公共は、第2会派の議会内野党化を確実にしてしまった。何故そこまで強硬に選挙を主張したのか疑問が残る。
いずれにしても、有権者にとって議会の中でそのようなパワーゲームが行われている事なぞ知る由もないだろうが、少数会派が質問時間の制限など、虐げられているケースは、他の区議会や地方議会でもよくあることだ。
こうしたことが起きる原因に、議会の形骸化が上げられよう。多様な住民の意見を吸い上げ、より住みやすく、安心安全な街づくりを目指すのが地方議会のそもそもの役割だが、実際そのように機能していない議会が多い。会派同志の勢力争いなど、有権者にとってはどうでもよいこと。要は住民の為に建設的な議論を尽くすことが出来るかどうかにかかっている。しかし、港区議会の今回のケースを見る限り、自公共の考える会派というのは、政策面で一枚岩で、他の会派と信頼関係がなくてはならないものらしい。なれ合い集団の会派だけで構成される議会など存在意義がないではないか。
そもそも地方議会は国政とは違う二元代表制であり、住民の為の政治を行うのに、国政政党単位の会派が必要なのか、と言う疑問がわく。実際、地方議会では政党単位の会派が分裂していたり、国政野党の会派と共同会派を組んでいたり、ということは普通にある。それは、とりもなおさず、地方議会では国政政党の会派でしか活動できない、と考える議員が現実問題存在する、ということだ。
また、議会として何らかの条例案を決議する場合、仮に会派拘束がかかったとしても、自らの政治信条から反対にまわったり棄権したりすることは政治家としてありうる話だろう。それを許さない会派とは誰のために存在するのか?
今回の港区議会の問題が広く社会に知られることになり、他の地方議会にも目が向くことになった。大阪市では都構想を巡り住民投票が行われたが、二重行政や税金の使い方などが問われたことに意味があった。東京の特別区の在り方も将来問われないとは限らない。
地方自治は私たちの生活に直結しているだけに、有権者の眼は今後も地方議会に向き続けるだろう。今回の港区議会多数会派の選択をどう評価するのか、有権者も議員を選んだ責任が問われている事を忘れてはならない。
(注1) 港区議会定数34人、会派勢力図は、自民13人、公明6人、