[西村健]【東京は安全?“体感不安”は増えている】~東京都長期ビジョンを読み解く!その23〜
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
「争いや疑いのことばを知って・・・」と安全地帯の名曲を聞きながら、今回は安全地帯、いや東京の安全について考えていくことにしよう。東京都長期ビジョンにおいては、都市戦略4「安全・安心な都市の実現」、政策指針10「日常に潜む危険や犯罪から都民を守る、安全・安心の確保」について書かれている。そこでは、犯罪リスクを低減し体感治安を向上するために、通学路に防犯カメラを設置すること(2018年までに公立小学校全1296校)、サイバー攻撃対策の強化(サイバーシステム攻撃検知システムの構築・運用)が目標に掲げられている。
都内での刑法犯認知件数は、26年度で16万134件となった。前年比で1.5%減少しており、平成15年以降連続して減少している。
各種統計データ(注1)からデータを抽出し、まとめて、東京都内自治体間で比較してみた。そうしたところ、以下のようなことが明らかになった。
・認知件数のトップ3は世田谷区、新宿区、大田区
・人口比での認知件数の割合が高いトップ3は千代田区、渋谷区、新宿区
・人口比での認知件数の割合が低いトップ3は御藏島町、神津島町、三宅村(23区では文京区、杉並区、世田谷区)
・昼間人口比での認知件数の割合が高いトップ3は武蔵野市、台東区、羽村市(23区では台東区、葛飾区、豊島区)
・昼間人口比での認知件数の割合が低いトップ3は桧原村、奥多摩町、島部(23区では中央区、千代田区、文京区)
・23区では江東区、目黒区、大田区、世田谷区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、葛飾区が25年と比較して増加
※トップ画像参照/東京都昼間人口の予測−統計データ− 平成27年3月をもとに筆者がデータを作成(出典:警視庁HP「東京都の自治体別刑法犯発生状況」の犯罪発生状況一覧表/平成22年~26年)
皆さん色々意見があるだろう。次に東京の世論調査データを見てみよう。平成23年11月に公表された「都民生活に関する世論調査」という調査がある。
この中で、ここ5年間で東京の治安はよくなったと思うかを聞いた設問では、「よくなった」が15%、「悪くなった」は33%、「変わらない」が42%といった結果になった、
ここで明らかなのは、認知件数は減っているものの、体感不安は増えているということだ。その不安の理由として、この調査では「社会のルールやマナーを守らない人をよく見るから」が49%、「近所で不審者を見かけたり、話を聞いたことがあるから」が36%、「事件に関するニュースをよく耳にするから」が32%という理由のトップ3を占めている。
警察の方々は成果を上げ、とても頑張っているものの、残念なことに、多くの都民はその成果を実感できていない。違法ドラッグ対策、迷惑メール対策、不法労働の外国人に対する職務質問、爆走する自転車対策など、住民の期待に対しても応えきれていないからかもしれない。
交番に行くと、相変わらず用紙に手書きで盗難届を書いたり・・・とお役所仕事のままである。交番にデータベースを置いたり、職員1人1人に携帯情報端末を持たせたり、もっとIT化、データ分析など予算を付けてあげて欲しい。
職質において都民に時間を取らせない、そして、警察の方々がさらなる成果を上げ、東京が「安全地帯」になるためにも。
(注1)
・自治体別刑法犯発生件数 【平成22年~平成26年】
(本記事に埋め込まれているリンクを見るには、 http://japan-indepth.jp にてお読みください)