【外国人に人気の東京、一極集中緩和を】 ~東京都長期ビジョンを読み解く!<特別編>その25〜
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
「歓迎光臨」「Willkommen」「Welcome」。日本人が外国人を迎える言葉を耳にすることも増えた。多くの外国人観光客が行き交う東京の街。外国人は東京に何を見るのか。資本主義の繁栄か、統一感のない独特の街並みか、江戸時代から続く東洋文化か、東西の文明が同居する奇妙な風景か、クリエイティブなデザインか、世界最高の高スペック製品か、小さいけど機能的な商品か、それとも、行き交う人の通勤時間の無表情な表情か。
「観光立国」を掲げてからの我が国関係者の努力が成功を収め、観光政策は空前の盛り上がりをみせている。2013年に年間1,036万人の訪日観光客を記録し、1,000万人の大台を超え、さらに14年は1,328万人と前年比28%と大幅増加。旅行消費額は13年1兆4168万、14年には2兆を超えた。
この理由として、訪日ビザの要件緩和、東京五輪、国内各地へのLCC就航、円安、国内景気の回復などが要因と言われている。なんといっても日本国の首都である東京は役割を果たしているし、恩恵も受けている。そこで、東京都の「平成25年度国別外国人旅行者行動特性調査」を見てみよう。東京観光を具体的に見てみると面白いことがわかる。
東京を訪問中に行った活動としては、「日本食を楽しむ」88.7%、「ショッピング」74.9%、「街歩き」73.1%の順である。タイ人は「ショッピング」の割合が高い。国内旅行全体と比較すると「街歩き」が多いのが特徴だ。
訪問した場所は「新宿・大久保」55.6%、ついで「銀座」48.4%、「浅草」47.3%。ただし、「渋谷」は全体で4位であるが、台湾、中国、マレーシア以外ではほとんど3位以内に入っており、イタリア以外の欧米人には堂々の1位(イタリアはファッション好きらしく銀座らしい)。欧米人にとっては、スクランブル交差点の壮大さや最先端のファッション「ストリート」はとてつもない魅力だそうだ。ちなみに、中国は、「銀座」「秋葉原」「浅草」の順である(やっぱりと思った?)。
また、訪都満足度も高い。「大変満足」「満足」「やや満足」を合わせるとなんと96.0%。ほとんどの人が満足するという驚異的な数字だ。ただし、韓国、台湾、中国、香港といった東アジアで若干「大変満足」の割合が少ない傾向にある。やはりそもそも共通点が多いからか、欧米の人ほど感動は薄いようだ。ちなみにマレーシア、アメリカ、カナダ、英国、オーストラリア、その他では「必ず来たい」が6割を超えている。
最近、多くの外国人にインタビューする機会があったが、東京はとても魅力的なことが裏付けられた一方、多くの人が混雑には辟易するらしい。「東京に集中させすぎ。地震の時は大丈夫?」と誰もがいう。
今後さらに外国人観光客を呼び込むのなら、これ以上東京に都市機能を集中させるべきではないだろう。観光地としてもっとやっていくのなら、行政機能を多摩地域や都外に移転させることを検討してもいいのではないか。
大きなキャリーバッグを持って移動をする外国人に対して、イラっとする表情をみせる日本人を見たくはない。