[安倍宏行]2014年相場・日経平均20000円超えも伺わせる強気の予測の根拠は一体何?〜証券業界の強気は当たるか?
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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「(相場の)風景は一変した。アベノミクスの1年間だった。」
高揚した面持ちでそう述べたのは大和証券の日比野隆司社長だ。1年前のこの時期、2013年の日経平均の最高値予想を12,000円から14,000円に引き上げないといけないな、と言っていたのを覚えているが、その予想が今年、ここまで覆るとは誰が想像しただろうか。
草木頼幸・大和証券副社長は満面の笑みを浮かべ、こう話した。
「2014年の最高値は18,500円から19,000円でどうかな?」
20.000円超えも伺わせるこの強気の予測の根拠は一体何なのか?
一つには外国人買い残だ。日比野社長は、2013年の外国人の買いは13兆円の買い越しだったが、まだ余力は十分あると予測、2014年も買い越しが続くとの見通しを語った。
さらに、
- NISA[注1:少額投資非課税制度]口座開設が2014年度に入って加速すること。
- GPIF[注2:年金積立金管理有用独立行政法人]が運用先をリスク性資産へ振り向ける可能性が高いこと。
などにも触れ、「貯蓄から投資が加速する年になる」と自らの相場予測に自信を示した。2007年当時の安倍政権における最高値、18,280円台を射程に捉えた動きと予測する。ここで、読者諸氏の中には、4月の消費税率上げの景気への影響はないのか?と思う向きもあろう。
これについては、9日行われた日本総研のシンポジウム「2020年までに何をすべきか~持続可能な経済社会の構築に向けて~」において、法政大学大学院・小峰隆夫教授は、消費税引き上げはすでに相場に織り込み済みであり、景気への影響は限定的との見方を示した。証券関係者も同様にみているということなのだろう。
しかし、消費者にとってはまだ実感はない、というのが本当のところなのではないか。日本労働組合総連合会が4日発表した調査結果によると、2013年冬ボーナス(加重平均)は平均73万3,102円で、前年同時期の67万9,419円と比べて5万3,683円(7.90%)増だというが、それは大企業の話であり、中小企業にまでまだ波及効果は出ていないと思われる。
但し、製造業中心に業績が回復しており、いずれは中小にも波及してくるだろう。証券業界の強気の見通しが当たるかどうか、まずは年末大納会の値がどうなるかだ。我々消費者も自らの相場感に基づき、資産ポートフォリオを見直したほうがよさそうだ。
【注1】2014年1月からスタートする制度。運用で得た利益が非課税になる。夫婦2人で口座を開設すれば、1年間に夫100万円、妻100万円、計200万円までの元本が非課税で運用できる。最大で、5年間で計1千万円が非課税で運用できる仕組みで、個人マネーが貯蓄から投資に回る起爆剤になると期待されている。
【注2】厚生年金と国民年金の積立金124兆円を運用する世界最大の年金基金。政府の有識者会議は11月、国内債が6割を占めるGPIFの資産構成を見直すよう提言。不動産投資信託(REIT)や不動産、インフラなどのリスク資産への投資を検討するよう求めている。9月末の実績は国内債58.03%、国内株16.29%、外債10.13%、外株13.49%。
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