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.社会  投稿日:2013/10/10

37兆円の医療費〜高水準の国民皆保険はいつまで続くのか


石川和男(NPO法人社会保障経済研究所理事長、東京財団上席研究員)

執筆記事プロフィールWebTwitter

日本の医療は「国民皆保険」。国民全員がどこかの医療保険に加入する。病気やけがをして「患者」になった時、医療給付によって医療費の大半を補助してもらえる。これにより、日本は「世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を実現」していると言われる。

患者の負担割合は、約37兆円にもなる国全体の医療費総額の1割強。この割合は大きいのか小さいのか、誰も断言できない。ただ、国全体の財政が非常に厳しいので、この状況がいつまで続けられるか、疑問視している人は多いのではないか。

国民皆保険の特徴は、(1)国民全員を公的医療保険で保障、(2)医療機関を自由に選べる (フリーアクセス)、(3)安い医療費で高度な医療、(4)社会保険方式を基本としつつ皆保険を維持するため公費を投入、の4点だ。今後も、この4つ全てを続けていけるだろうかと考えてみる。

(1)と(2)は、必要最低限の医療サービス(ナショナルミニマム)の根幹中の根幹。(4)は、医療保険財政の仕組みとして、当面、これ以外はあり得ない。(3)もナショナルミニマムの色彩が濃いが、これには吟味が必要だ。「安い」とは、何が「安い」ということなのか。患者負担額が安いということなのか、患者負担額と医療給付を合わせた医療費総額が安いということなのか。医療費総額が安い分には越したことはないが、患者負担額だけが安いままだとなると話は違ってくる。

国民皆保険が始まって半世紀。

その間に医療事情は飛躍的に好転し、今では世界最高水準と言われている。医療財政は暗転している。そうなると、医療を巡るナショナルミニマムの水準を引き下げない困ることになる。それは、「安い医療費」を見直すことであり、患者負担割合を引き上げることだ。

時代の変遷とともに、ナショナルミニマムも変化していくはずである。皆、実は心の中ではわかっていることなのではないか?

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