無料会員募集中
.国際  投稿日:2016/1/17

[イ・スミン]【核を握った北朝鮮、イランと同じ道へ向かうのか?】~カギは中国の動き~


李受玟(イ・スミン/韓国大手経済誌記者)

暴走している北朝鮮にとって、運命の瞬間だった。

12日、米下院(現地時間)は、本会議で北朝鮮に対する経済の制裁を大幅に強化する内容の、対北朝鮮制裁法案(H.R.757)を議決したのだ。これまで北朝鮮の支援勢力になっていた中国を考慮して今まで持ち出していなかった「セカンダリー・ボイコット」が登場したのだ。

セカンダリー・ボイコットは、核活動と関係のない一般的な経済の活動でも制裁対象国と取引する第3国の全ての企業、個人などに制裁を加える強力な金融制裁だ。予告のない北朝鮮の核実験に驚いた世界がこんな米国の動きに注目せざるを得ない理由もここにある。

この制裁は北朝鮮と一緒に核で交渉力を上げようとしたイランに適用され、結果的に米国に勝利をもたらしてくれた戦略だ。 ただ、北朝鮮の場合、対イランの制裁のように包括的▪強制的な条項が入る代わりに、米政府が関連措置を取ることができる裁量権を持っていて、人道的なレベルの支援までは禁じないものと予想される。

もし対イランの制裁のように、米国が希望するよう、北朝鮮に流れる資金を防ぐことができるようになれば「5回目の核実験」は歴史に記録されないだろう。しかし、問題は、これまで北朝鮮の友好国として、北朝鮮の人工呼吸器の役割(特に経済の側面で)を果たしてきた中国がどのようなスタンスを取るかだ。

今まで米国が北朝鮮にセカンダリー・ボイコットを前面に出すことのできなかった理由も中国との摩擦を憂慮したからである。もし中国が米国に協力しなければ金正恩(キム・ジョンウン)はいくつかのチャンネルを通じて今までのようにドルを手に入れることになる。

朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が米国とのぎこちない関係を甘んじながら選択した「親中戦略」が誤った道だったという批判が出るほど、中国は北朝鮮の核実験に消極的な態度を取っている。一部ではこれについて「韓中の関係は歴代最高だ」と自画自賛した朴政府が非常に間違った道に入ったと批判している。にもかかわらず、韓国政府は優先的に中国、その次にロシアまで対北朝鮮の抑制政策に友好的な立場を取るように総力を挙げている。

そのスタートは朴大統領が切った。

13日、朴大統領は対国民談話を通じて「難しくてやりたくない時、手を握ってくれるのが最上のパートナーだ。中国は安保理常任理事国として必要な役割を果たしてくれるだろう」と直接に言及した。異例な言葉だ。また「強力な意志が実際に必要な措置として連結されないなら、今後5番目、6番目の追加核実験も防ぐことができず、朝鮮半島の平和と安定も不可能であるという点を中国もよく知っていると見ている」と語った。

外交の専門家は、朴大統領のこのような発言は、「強力な対北朝鮮制裁は金正恩政権を危うくし、半島の平和と安定を破る」と判断している中国の立場とは正反対の行動を注文したと分析している。そして朴大統領は米国のサード(THAAD)[1]についても「韓国の安全保障と国益に従って検討する」と言及した。これも中国を動かそうとする努力と言える。

実務のラインでも忙しく動いている。6者協議の韓国側首席代表の黄浚局(ファン・ジュングク)外交部の韓半島平和交渉本部長は14日、北京に駆けつけ中国側の首席代表である外交部韓半島事務特別代表と会い、19日にはモスクワへ出国、イゴリ・マルグルロプ外交部アジア太平洋次官と会談した。米日との協力関係を確認した韓国は、これから中▪ロ、特に中国の急な変化を導き出すのが問題解決のキーだという判断をしたとみられる。

しかし、「サード」をいうカードは、直ちに配備するのが難しいため、当面の北朝鮮核問題において強くて確実な対応にはならず、中国を動かすには限界があるというのが外交筋の見方だ。さらにこれまで「対話と交渉を通じて韓半島の非核化を追求する」との目標に固執してきた中国が変わるかも疑問だ。

ロシアは中国の路線変化によって対北朝鮮の制裁に対する協力するかどうかを決定する可能性が高いため、中国が北朝鮮の核問題に積極的に取り組まなければ、結局、過去のように中身のない6者協議が続くという見通しが有力だ。

韓国政府が北朝鮮の古い友邦である中国をどこまで動かすことができるのか、そのレベルによって、韓米日の協力も成功と失敗に分かれる見通しだ。結局、キーは中国にある。

[1] 終末高高度防衛ミサイル。アメリカ陸軍が開発した弾道弾迎撃ミサイル・システム。


この記事を書いた人
イ・スミン韓国大手経済誌記者

2008年11月~ 2009年8月 一般企業(商社)勤務2009年2月  延世大学卒業2010年~   大手経済紙 記者

イ・スミン

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."