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.国際  投稿日:2016/3/29

愛人騒動で泥仕合いの共和党 米国のリーダーどう決まる? その11


大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)

「アメリカ本音通信」

先週行われた大統領予備選挙はワシントン、アラスカ、ハワイ州での民主党コーカス(党員集会)3つのみ、すべてバーニー・サンダースがヒラリー・クリントンを破る結果となった。だが、コーカスと呼ばれる党員集会は、一定の時間を割いて集会所に足を運び、議論に参加しなければ投票ができない。したがって熱心に特定の支持者を弁護できて、時間が自由になる支持層を持つ候補者に有利な選出方法だ。

バーニー・サンダースの支持者がリベラルな大学生や新卒社会人ぐらいの年齢層が中心であることを鑑みれば、コーカスで彼が有利なのは明白だ。特にワシントン州のシアトルは、マイクロソフトやアマゾンなどIT企業の本社があり、リベラルな若者が集まっている土地柄だ。「バーニー・ブロー」と呼ばれる若きインテリ白人男性層が多いこの地域での勝利を根拠に、このままサンダースが勢いづいてクリントンを追い抜けるとは思われない。ただ、当初はクリントンの独走、独り勝ちとされていたマラソンのシナリオに、蓋を開けてみれば後ろの方で息を切らせながらもなかなかリタイアしない愛すべきお爺ちゃんキャラがいる、といったところだろう。

一方の共和党レースは、共和党内で夏の党大会においてトランプを認めるのか、認めないのかの泥仕合いが続いている。保守派のマルコ・ルビオが脱落する直前にそれまで頑なに拒んでいた、トランプとの罵詈雑言戦に参加し、「トランプの指は極端に短い。あそこの大きさに比例すると聞くだろう」と、地に落ちた発言で墓穴を掘り、指名戦から撤退を余儀なくされたのに続き、トランプを追って2位につけているテッド・クルーズと今度はお互いの妻をツイッターでけなし合うというバカバカしいバトルを展開している。

ことの発端は、敬虔なモルモン教徒が多いネバダ州の予備選を目前に、クルーズ陣営が「これがトランプ夫人の姿」とメラニア夫人がモデルだった頃のヌード写真をツイッターで流したことだ。ネバダ州では、前回の大統領候補であり、モルモン教徒でもあるミット・ロムニーが「トランプは大統領にふさわしくない」と、クルーズに投票するように州民に呼びかけて応援までしていた。

クルーズは、トランプのように公然と暴言を吐くようなことはしないが、対立候補が撤退するので代わりに自分に投票するように促すでっち上げメールをばら撒いたり、姑息な手段を使うことを躊躇しない。お尻も露わなヌード写真は、クルーズを支援する団体が、トランプと出会う前の2000年にイギリス版GQ誌のグラビアを飾った時のワンショットをフェースブックで流したものだ。

これにさっそくトランプはツイッターで噛みつき「嘘つきテッドめ、それならこっちも奥さんのことをバラすぞ」と書き込んだ。クルーズ夫人のハイディはゴールドマン・サックス投資銀行のエグゼクティブで、トランプが持っているネタが何なのか、メディアで憶測されているが、クルーズの選挙資金のためにゴールドマン・サックスから融資を受けたことや、クルーズの地元であるテキサスに引っ越した際にウツになったことは既に報じられている。

そんなタイミングでナショナル・エンクワイヤラー誌がこれまでにテッド・クルーズに5人もの愛人がいたというスキャンダルを載せた。首都ワシントンの高級娼婦やら教師やら同僚までボカした顔写真で名前も出さず、内容も一方的な証言のみというお粗末な記事だが、タブロイド誌はこんなもの。クルーズはさっそくこれをトランプが仕掛けたもので(同誌はトランプ支持を表明している)、すべてでっち上げだと全否定。だが、意外にもナショナル・エンクワイヤラーはこれまでにも、2008年に民主党の副大統領候補だったジョン・エドワーズ、プロゴルファーのタイガー・ウッズ、黒人指導者のジェシー・ジャクソン、1988年に大統領候補だったゲイリー・ハートの愛人問題をすっぱ抜いて、後にそれが証明されたという実績がある。

ネットや他のメディアがこれら5人の女性が誰なのか、競って特定中だが、既に身元が割れた中にはクルーズの地元テキサス州で共和党お茶会派の政治運動をしていた時にトランプと知り合い、現スポークスマンを務めているカトリーナ・ピアソンや、撤退した女性大統領候補カーリー・フィオリーナの選挙事務副長サラ・フロレスがいる。

トランプからの挑発的なツイートに「洟垂れ小僧の臆病者」呼ばわりし、あからさまに怒ってみせクルーズだが、しばらくは愛人問題の対応に追われそうだ。


この記事を書いた人
大原ケイ英語版権エージェント

日本の著書を欧米に売り込むべく孤軍奮闘する英語版権エージェント。ニューヨーク大学の学生だった時はタブロイド新聞の見出しを書くコピーライターを目指していた。

大原ケイ

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