次期国連事務総長選始まる その1 仮投票でグテレス元ポルトガル首相トップ
植木安弘(上智大学総合グローバル学部教授)
「植木安弘のグローバルイシュー考察」
次期国連事務総長選は、7月21日、国連の安全保障理事会(安保理)で幕が切って落とされた。そして、この日の最初となる仮投票で、元ポルトガル首相で、前国連難民高等弁務官のアントニアオ・グテレス氏がトップに躍り出た。
グテレス氏は、安保理15カ国の内12票の支持を得た。スロベニアの元大統領で国連大使や国連政務局の事務次長補も経験したダニロ・トゥルク氏が11票を得たが、奨励しない票が2票あった。仮投票は、候補者を「奨励する」、「奨励しない」、「意見表明なし」の三通りの票で行われる。奨励する、しない以外は、意見表明なしである。
この二人を追うのが、ブルガリア出身で、現ユネスコ事務局長のイリーナ・ボコヴァ女史だ。9票の支持を得たが、奨励しないが4票あった。同じ9票を得たのが、元セルビア外相のヴュク・イェレミッチ氏と元マケドニア外相のスルジャン・ケリム氏だが、奨励しない票が5票あった。
ニュージーランドの元首相で、現国連開発計画(UNDP)総裁のヘレン・クラーク女史は、支持8票だったが、奨励しない票が5票あった。意見表明なしが2票あったため、安保理決議が採択されるのに必要な最低9票に届く可能性が残されている。その他6人の候補者は低迷したため、選ばれる可能性はほぼゼロとなった。
今回の仮投票では、拒否権を持つ常任理事国と非常任理事国の間に差を設けずに行われたため、いずれ両者の間に区別をつけ、常任理事国5カ国すべてから支持を得た候補者が選ばれることになる。その前に何度も仮投票が繰り返され、支持票が少ない候補者を振るい落としていく方法が取られる。
7月末に次の仮投票が行われる可能性が高く、そこで再度低迷した候補者は辞退するものとみられる。そして、最初の仮投票で上位5-6人が更なる選挙キャンペーンを継続していく可能性が高い。8月は夏季休暇を取る大使が多いことから、上位を巡る仮投票は9月に再開されると見られている。次期事務総長の任期は来年1月1日からであり、体制を整える時間が必要なことから、10月に次期事務総長が選出されることが予想される。最も、これは合意が成立した場合の話だが。
(その2に続く。全4回)
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この記事を書いた人
植木安弘上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授
国連広報官、イラク国連大量破壊兵器査察団バグダッド報道官、東ティモール国連派遣団政務官兼副報道官などを歴任。主な著書に「国際連合ーその役割と機能」(日本評論社 2018年)など。