次期国連事務総長選始まる その2 次期事務総長ヨーロッパ出身か女性か
植木安弘(上智大学総合グローバル学部教授)
「植木安弘のグローバルイシュー考察」
国連事務総長は、安保理の推薦の下に総会で任命される。これまで、安保理は一人を推薦し、総会は自動的にこれを受け入れてきた。この手続きは国連創設直後の国連設立委員会の勧告に基づき、総会が一人の推薦が望ましいとして決議したものである。
しかし、このプロセスは安保理に事務総長選出権限を委ねることになることから、総会の任命権限を強化し、全加盟国の総意で事務総長が選出されるべきとの意見が近年強くなり、昨年の9月の総会決議で、総会議長と安保理議長が共同で候補者を募ることになった。
また、同じ総会決議では、次期事務総長選出において地理的配分と女性への配慮が強調された。地理的配分については、国連憲章に記載されているわけではないが、過去5人の事務総長が、ヨーロッパ、ラテン・アメリカ、アフリカ(2人)、アジアと回ったことと、ラテン・アメリカのあと、アフリカ諸国が次はアフリカの番と主張したことから、地域的輪番制が受け入れられたことによる。アフリカの次はアジアとの声は暗黙の裡に了解された。
この輪番制でいくと、次はヨーロッパということになる。ところが、総会や安保理、経済社会理事会などの国連主要機関でのメンバーの選挙は、ヨーロッパの場合西ヨーロッパと東ヨーロッパに分かれる。これまで北欧を含む西ヨーロッパ・グループからは3人の事務総長が出ていることから、今回の事務総長選では東ヨーロッパ・グループが同地域からの選出を主張している。事実、12人の候補者のうち8人が東ヨーロッパ諸国から立候補している。残り2人は西ヨーロッパ(ニュージーランドも含む)、2人はラテン・アメリカからである。
これまで8人の事務総長はすべて男性だったこともあり、既に、前回の事務総長選から女性を押す声が強くなり、事実、前回はアジア出身の候補者に加え、女性支援団体の支持を受けて、ラトビアのヴァイラ・ヴィケ=フレイベルガ大統領が立候補した。今回も、女性支援団体が女性候補を推すキャンペーンを張った。国連加盟国の中にも、女性事務総長を支持する国々が出てきた。
このようなことを背景に、昨年の総会決議で女性への配慮がなされ、昨年末の総会議長と安保理議長の加盟国に向けた共同書簡では、男性に加え、女性の立候補の推薦も奨励した。結局、候補者12人のうち半分の6人が女性である。そのうち4人が東ヨーロッパ出身である。これまで女性の事務総長は誕生していないことから、地理的輪番制を崩す要因は女性の選出であり、そのため、ヨーロッパに所属しないラテン・アメリカからも2人の女性候補者が名乗りを挙げている。
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この記事を書いた人
植木安弘上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授
国連広報官、イラク国連大量破壊兵器査察団バグダッド報道官、東ティモール国連派遣団政務官兼副報道官などを歴任。主な著書に「国際連合ーその役割と機能」(日本評論社 2018年)など。