直ちに小池新党はない 若狭勝衆議院議員インタビュー
安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト)
「編集長の眼」
安倍)7名の区議が除名されればご自身離党も、と仰ったと報道されていますが、何か党側から言ってきていますか。
若狭氏)新聞がかなり大きく「離党も」と書いているので、一人歩きしている感じがあります。あくまで10月30日までに離党届を出さなくて、都連における除名処分が執行されるのであれば、という条件付のものですし、恐らく自民党本部と都連の方できちんとした対応をしてくれるものと私は強く期待していますので。
安倍)若狭さんが党の公認になるのに問題はなかったわけですよね。その中で区議7人の話が出て、ちぐはぐだなと思いました。党本部の都連に対するグリップが効いていないということではないでしょうか。
若狭氏)東京都連は確かに普通の県連に比べると特殊性があると思います。それはある意味東京都の財政も豊かで、国会議員にお願いして東京都の色んな政策を実現していくということをする必要がない。他の県は財政的にゆとりがないので国会議員にお願いして、予算付けも含め力になってもらうということで国会議員に対しての尊重とかリスペクトとかがあると思います。都連に関してはそのようなことがない。都議会議員が大きな力を持っている(ということが)背景にはあるんだろうと思います。
安倍)だからこそ都連も独自路線を貫いてきたということもあるのでしょうが、党本部からしてみたら困ったなということはあるのでは?
若狭氏)自民党の組織としてやっているので最後の決断を迫られるときは党本部が指導力を発揮することがあると思いますが、そこまで最終的な局面に至ることがないので、結果的には都連が本部とは違うことをやって、それがそのまま流れていく形が皆さんには見えてしまうということだと思います。都連の決めたことを尊重する、都連の決めたことに介入しない、ということは事実上あると思います。
まず何よりも、10月23日の東京10区の補選において皆が一致して若狭を応援して当選させたということをふまえ、都連においてきちんと今回の区議の処分について考えてくれるということを大いに期待しています。自民党本部の二階幹事長が「打ち方止め」といったわけですから、自民党本部と都連との動きはスタンスが違うというのは感じています。最終的には党本部も含めしっかりサポートしてくれるという思いはあります。
安倍)では区議さんたちは除名にならないということでしょうか。
若狭氏)最終的にはどういう経路をたどるかは別として除名にはならないと私は強く期待しております。
安倍)そのような意味で若狭さんは早めにけん制球を投げたという恰好になっているわけですね。ところで、以前都連との仲介役にはならないとおっしゃっていましたね?
若狭氏)都連との仲介役という点ですが、そもそも、国と東京都の橋渡し・連携というものには、私においても、これまでの都知事選をふくめ、東京都出身の国会議員であるということもふまえて、東京都との連携、特にオリンピック・パラリンピックというビックイベントで東京都がホストシティではあるけれど、他方、国においても大きなイベントですのでその連携が必要となってくると思います。
そこにおいては私が適任だと思います。都知事選で戦ってきた小池さんのことも良くわかりますし、大いに力を尽くしたいと思います。仲介役という言葉がダーティーな言葉に聞こえてしまいますが、水面下で手を握るとか、手を握らせるとか、そういう意味合いはないということで、仲介役にならないと言ったものです。
安倍)都政との関わり合いは今後どのように考えていますか。
若狭氏)東京10区の衆議院議員という立場では、消滅可能性都市の豊島区と言われていますが、少子化という日本の大きな問題に絡むテーマですから、人口減をどうして克服していくのかが大きなフィールドになると思います。
安倍)小池都政がかかわっている新市場の問題、オリンピック・パラリンピックの問題とはどう関わっていきますか。
若狭氏)新市場の問題は農林水産省の認可が必要になり、その意味では、国の問題でもあると思います。豊洲も築地も日本で一番注目される市場なので、衆議院が持っているひとつの国政調査権の前提として、私が色んな調査をしてコミットしていくのはあると思います。
安倍)豊洲の問題も次から次へとでてきますが、都民として見ていると、地下空間が何故かできている。誰が責任者かわからない。しかし、いくら犯人探しをしても都の中で探しているので出てくるわけがないと思います。そうすると小池都知事が言っている真の情報公開、真の透明性からは遠くなってしまうので、いくら調査チームを作っても結局何も出てこない。となると余計失望感が出ます。そこで何か若狭さんができることはあるのでしょうか。
若狭氏)結論から行くと衆議院議員だと兼職規定に引っかかるので、東京都の顧問にはなれません。僕は副知事とか東京都の顧問になったとしたら自負心として相当な切込みはできるという思いはあります。残念ながらそれができないので側方支援的なものにとどまってしまいますが、小池知事は相当とことんやると思います。調査は一応しましたと形だけで終わることはないと思います。アプローチとして事実・真相解明に向けての勢いをもってやると思いますので、お茶を濁して終わる、最初から結論ありきのような調査を行うことは全くないと思います。
安倍)改革本部のスタッフと、オフィシャルではないにしても何か連携はなさっていますか。
若狭氏)東京都の顧問でもないので、東京都の情報が外部の人間に漏れるというかたちの批判を浴びてしまうとよくないので、そのあたりは充分留意しながら、私はあくまで公表されているデータをふまえて自分なりにいうと分析してここはこうではないか、ということは告げたりはしています。
安倍)利権の追及は外から見ていて何か感想はありますか。
若狭氏)これまでは小池知事がブラックボックスと選挙戦の時に言っていましたが、ブラックボックスは相当存在すると、知事選後にこの2か月ぐらいの間によりいっそう強く感じています。
安倍)以前特捜にいた感覚からすると利権のにおいがする案件ははっきりある、と以前おっしゃっていましたが
若狭氏)刑事事件に発展して解明できるかというと、特捜部でやるときも同じような案件が何百件あったとしてもその中の一件という確率です。証拠の壁が厚いので特捜部であったとしてもそんな確率だとすれば、強制権限がない都の調査においては限界があるということは紛れもなくあると思います。今後どれくらい解明できるかは別ですが、少なくとも感覚的には、これまで利権によって色んなものが決められてきたようには見えます。
安倍)若狭さんは自民党都連のメンバーで、都連の動き俯瞰して見ていらっしゃいます。知事と議会とのガチンコにはならないのではないかと思いますがどう見ていますか。
若狭氏)少なくても今小池知事が訴えていることはある意味正論だと思います。
色んな情報公開をして、透明化して都民ファーストのもとで都政をやっていくというでは正論を述べていると思うので、正論を述べている事に対して自民党都議会が異を唱えるかというと、都民有権者の感覚からするとどうみても小池さんの方が正論を言っていて、それに感情的に異を唱えているんじゃないかと見える恐れが強いと思います。
都議会自民党が当初思っていたよりは対抗的な感じで出てくるとは思えません。
安倍)マスコミが大好きな新党ができて、刺客を送り込んでなどという議論をいう人もいますが、そういうふうにはならないのかなと思いますが。
若狭氏)来年の夏の都議選で大事なことは議会である以上は小池知事を理解してくれる人の議員がどの程度多くなるかは小池知事においても大きな関心事だとあると思います。新党とは作ることによって都議会の構成を大きく変えることができるということであれば小池新党を作る必要性を抱かれることはあると思います。しかし、逆に新党を作ると自民党の中で小池さんの主張を正論だと思う人が、自民党を出て新党に加わるというのが躊躇する人が出てくると思います。だとすると作らなくて都議会自民党でこれから小池知事のことをきちんと支えていこうという人が仮にいるんだとすれば、ソフトな柔軟な形で都議会の構成を小池支持派で増やしていくということも選択肢じゃないかと思います。
結論は都議会で小池支持者を増やすことは間違いないと思います。政治家である以上都政で小池知事が自分の政策を実現しようと思っている時には都議会の支援者、支持者を増やすことは間違いなくあると思います。その目的に向かってどういうアプローチが望ましいのかという判断はされると思います。その時に小池新党がいいとされる場合もありますし、小池新党ではなくてもう少し形はないけれど小池さんを支援してくれる人が都議会の中に多くいるということでもその目的が達成できると思います。今直ちに小池新党だとかという話は判断しにくいと思います。
安倍)そのタイミングはいつ頃でしょうか。
若狭氏)28日から始まった都議会が対決姿勢を鮮明にしてくるとなると小池新党の方に動いていく可能性が多くなったと思いましたが、今のところ、自民党が、今回の都議会において対決姿勢を示すということはないのではないかと思われます。
来年の都議選までは都議会自民党はそんなに対決姿勢は示さないのではないかと僕は思います。対決姿勢を表せばすぐに小池新党になっていくと思いますが、そうでなければ自民党の中での小池さんを支援する人が出てくるのであれば、小池新党を作る必要もないという動きになることも充分あると思います。
いずれにしてもどちらかわからないので、政治塾「希望の塾」というのを立ち上げる、政治の原点を皆と学びましょう、党派を超えて色んな人と。将来小池新党の人材の発掘、供給源としてなりうると思います。仮に小池新党としてやるとしても都議選の近くになってからという可能性があるのではないでしょうか。
色んな候補者の中からの選定は12月ぐらいまでには詰めておかないと間に合わないと思います。一回はムーブメントで当選できたとしても、いい人を選ばないと次の時にはその人の色々な問題点とかが表面化して足を引っ張るという形になるのでだめになってしまう、それが一番怖いと思います。
安倍)都知事給料半減の条例化は議会通ると思いますが、都議会議員の給料はどうなるのかという話が出ていますね。
若狭氏)都議会議員の報酬を(都知事選の)公約にうたおうかということも一つあったのかもしれませんが、知事だけの話にした方が話は流れていくけど、都議会議員の報酬というと抵抗があるというか、スムーズにいかない、知事の給料削減という案も通らなくなるということが総合的に考えられると思います。都議会が決めることを知事が指揮したり指示したりすることはできないので、有権者がどう思うのかの問題、有権者に委ねるかたちになっていくと思います。
安倍)都民の世論がどうなっていくかということでしょうか。
若狭氏)都知事からすると自分の給料削減は自分の身を切るという姿勢を明確にするスタンスになりますが、都議会議員の給料を削減するというのは、知事の政策だとは思えないです。
安倍)豊洲は最終的には移転すべきとおっしゃいましたが、安全性が第一で空洞があろうがなかろうが、きちんと対策を施したうえでちゃんと改良して移転すべきということでしょうか。
若狭氏)もともと延期したのは9回モニタリング検査をして1月の中旬に結果が出て安全性がきちんと確認できてから移転しましょうというところが始まりでした。そのスタンスは引き続きあります。
そこに地下空間の話が出てきて話が複雑化しましたが、生鮮食品を扱うという特殊性をかんがみて、安全というのは一番大事だというのは一貫して変わらない話です。安全性が確保されれば、予定通り移転をするというのがあるべき姿だと私は思います。
安倍)最後に若狭さんが気にしているテロ基本法、引き続きこの問題については取り組まれるということでしょうか。
若狭氏)まず、遠藤前大臣にはサイバーセキュリティの問題を話として持ち込みました。遠藤大臣は、大臣が代わる前に予算はつけるという話にしてくれました。
他方、テロについてはオリンピック・パラリンピックの際に大規模テロが起きると華々しいオリンピック・パラリンピック台無しになるどころではない、さらに、そこにたくさんの死傷者が出てしまうと、いわば地獄絵になってしまう。元々は諸外国から日本のテロ対策というのは整備が進んでいない(と指摘されていた)、警察庁も平成16年の段階でテロ対策推進要項というのを出していますが、そこにこのまま法整備がなされないままだと日本はテロ対策のループホール(抜け穴)だと世界から言われてしまう。と記載されています。テロ資金関係の法律は若干作られていますが、もっと抜本的なテロ対策のそのもの法の整備は12年経っても全くされていません。
これから4年後のオリンピック・パラリンピックまでにそのまま何もつくられないままいって、実際大規模テロがなされてしまうと恐らく世界的に日本は批判の嵐になってしまうと思います。日本の対応というのは全くなされていない。基本的な考えが欠如していると批判されると思います。逆にいうと是が非でも法整備をきちんとやっておかなくてはいけないと思います。
諸外国アメリカ、イギリス、フランスのテロ対策を一覧表にしていて見てみると、おもしろいです。9.11を受けた後はアメリカも愛国者法といって強いテロ対策法ができます。だんだん9.11から時が立つと、人権の問題があるので少し緩やかになっていきます。テロがまた起きるとまた強くするというバイオリズム的な相関関係があります。人権の問題も絡むので仕方ないと思うのですが、共産党の皆さんを含め、それだけでも反対だという人が出てくると思いますが、とりあえず時限立法でオリンピック・パラリンピックまではテロを防ぐための法整備で法律ぐらいは作っておかないと批判の嵐になってしまうと思います。
諸外国もこうやって変わっていくので、日本も(テロ対策の感度を)高めておいて、終わったら平時に戻るという発想を導入することによって反対ありきの人達に対してもなんとかしましょうということで時限立法に賛成してもらえないかなと思っています。直前にできても遅いので、デットラインは来年の夏ぐらいだと思います。
安倍)是非それは取り組んで欲しいと思います。
(このインタビューは2016年9月28日に都内で行ったものです)
写真:©Japan In-depth 編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。