2017総選挙ファクトチェックプロジェクト
国際  投稿日:2016/11/26

トランプ氏の懐刀、バノン氏の辣腕

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 古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

全世界が注視するドナルド・トランプ次期アメリカ大統領は自分に最も近い距離におくホワイトハウスの上級顧問にスティーブ・バノン氏を任命した。同氏はオバマ政権やヒラリー・クリントンを支持したリベラル派からは「アメリカでも最も危険な政治仕掛け人」として恐れられる辣腕の保守活動家である。日本ではなじみのないこのバノン氏とはどんな人物なのか。その任命はトランプ政権にとってなにを意味するのか。

トランプ次期大統領は11月13日、首席戦略官兼上級顧問に保守系オンラインニュースサイト「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」会長のスティーブ・バノン氏を任命した。同時にトランプ氏は大統領首席補佐官にラインス・プリーバス共和党全国委員長)を登用することをも発表した。

もちろんトランプ氏はまだ正式に大統領になっていないが、来年1月20日の就任以降、ホワイトハウスではプリーバス首席補佐官とバノン首席戦略官が文字通り、新大統領の両腕となって、新政権の中枢を動かし、支えていくことになる。二人は同時にこれからの政権移行期の閣僚任命その他、トランプ氏の大統領就任へのプロセスをすべて助けていくわけだ。

この「トランプ新大統領の両腕」のうちプリーバス氏は一般にも広く知られてきた。まだ44歳だが、共和党全国委員長を務め、裏方とはいえ、国政の舞台で共和党の組織全体を運営してきた人物だからだ。一方、62歳のバノン氏は一般アメリカ人にはなじみがきわめて薄い人物である。

しかしバノン氏は今年8月からトランプ陣営の選挙対策最高責任者となっていた。そのトランプ氏がみごとに当選したのだから、バノン氏の選挙参謀としての成果は歴史的な大成功だったといっても過言ではないだろう。

このバノン氏は一般の知名度こそ低いが、実は政治の世界では知る人ぞ知る、保守陣営の陰の大物活動家である。ネット報道・評論の「ブライトバート」の経営に成功しただけでなく多岐なメディア事業への投資でも巨利を得てきた。出発は海軍士官で駆逐艦乗務や国防総省勤務を重ねたが、退役後はハーバード大学で経営学修士号を得て、ゴールドマンサックスにも務めた。

バノン氏は1990年代から政治活動を始め、メディアの利用とともに「保守政治活動会議」という全米的な草の根組織を結成し、影響力を強めた。巨大な体躯で自らもテレビやラジオに出演して、機関銃のような早口で語ることで知られる。出版や映画製作も活発で昨年は「クリントン財団」の資金疑惑に光を当てた「クリントン・キャッシュ」という単行本と映画を世に出し話題となった。

彼の政治主張は超保守でオバマ政権や民主党大統領候補のヒラリー・クリントン氏の政策を徹底して叩いてきた。そしてアメリカの国益最優先を唱え、自由貿易の放任や移民政策の弛緩に反対して、共和党穏健派のジェブ・ブッシュ氏らをも激しく批判した。グローバリズムにも正面からの非難を浴びせる。このへんはトランプ氏の主張とぴたりと一致するわけだ。

トランプ氏が大統領就任前にこのバノン氏をこれまでのホワイトハウスにはなかった「首席戦略官」という地位につけたのは、バノン氏への信頼の高さを物語っている。さてこのバノン氏がトランプ政権をどのように運営していくか。全アメリカがかたずを飲んでみつめる、ということだろう。

 

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この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「危うし!日本の命運」「中・韓『反日ロビー』の実像」「トランプは中国の膨張を許さない!」など多数。

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