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国際  投稿日:2017/2/2

ゴミと大気汚染に苦しむインド

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久保田弘信(フォトジャーナリスト)

世界人口ランキング第2位のインドは、第1位の中国と同様に深刻な大気汚染問題に直面している。2016年12月25日、インドの首都デリーの隣街グルガオンに住む友人が「ホワイトクリスマス」と題して一枚の写真を掲載した。窓から撮影されたその写真は全体が白く霞んでいて、濃霧の中にいる写真のようだった。

勿論、濃霧でも雪でもなく、大気汚染によって霞んでしまった街の様子を撮影したものだった。デリーやグルガオンでは目や喉が痛くなり、車で移動中でもマスクが必要なほど大気汚染は進行している。

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〈ストライキによってゴミが散乱しているデリー中心部©久保田弘信

インドも中国もその人口の多さと急速な経済発展による車の増加、工場などから出される有害物質が大気汚染の原因になっている。かつての日本がそうだったように経済至上主義で利益を生むためには投資をするが、環境問題を考え有害物質を出さないようにする分野には投資が遅れがちである。

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〈あちこちでゴミが燃やされ悪臭が立ち込める©久保田弘信〉

インドの場合、車の排気ガス、工場からの有害ガスに加えゴミ問題が大気汚染の大きな原因になっている。

昨年、取材に訪れたインドの首都デリーにはゴミが溢れかえっていた。ゴミ収集の業務を行う市のスタッフがストライキを起こしたのが原因だった。インドにも日本のようなゴミ収集のボックスもあるが、各地区の空き地にゴミが集められ、そこへ市の職員がやって来てゴミを収集し、ゴミ処理場に運ぶシステムになっている。首都のデリーでさえあちこちにゴミの山が存在する。人口が多いためゴミの量も多く、放置された時の影響は計り知れない。

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〈暖をとるためにゴミを燃やす子ども達©久保田弘信〉

そして、ゴミを原因とした大気汚染は冬場に最悪の時期をむかえる。貧しい人たちが暖をとるためにゴミを燃やすのだ。ダイオキシンを生み出すプラスティックなどはよく燃えるため、好んで燃やされる。

インドのゴミ問題、大気汚染の問題にはインドが長年持ち続けているカースト制度が大きく影響している。近年、職場や教育の現場でカーストを書く欄が撤廃されたが、依然としてインド社会でカースト制度は生き続けている。

インドでは各家庭やホテル、工場などから出るゴミを回収する人が存在する。それは市の職員ではなく低カーストの人たちだ。低カーストの人たちでゴミ回収を生業としている人が多い。それぞれに縄張りがあり、自分の担当地域からゴミを回収し、ゴミ収集場所まで運ぶ。ゴミ収集場所にはプラスティックや空き缶など使えるものを分別し、集めそれを売る人もいる。

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〈女性もゴミ集めをしている©久保田弘信〉

ゴミ収集をしている人にインタビューをしてみた。「デリーに出稼ぎに来たけど、カースト制度のせいで良い仕事が見つからなくて、危険や健康被害があってもゴミ収集の仕事の方が稼げるんだよ」との答えが返って来た。

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〈ゴミの中から使えるものを集めている家族©久保田弘信〉

ゴミ収集場所であるゴミ山にバラックを建て、家族全員で住んでいる人も多い。子供達は劣悪な環境で生活していて、学校へ行っていない子どもも多いが、そんな環境下でも子どもたちの笑顔は輝いている。

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〈ゴミと一緒に暮らす子どもたち©久保田弘信〉

遠い国インドの大気汚染の問題は隣国である中国程報道に上がってこないが、地球の大気はつながっていて、長い目で見れば日本だけでなく世界中に影響を及ぼす問題である。

ゴミ処理に関しては日本のJICAや民間企業がインドに対して技術援助を行なっているが、技術面だけでなく、カーストによる差別、ゴミは低カーストの人間に任せればいい。という差別意識をなくして行くことがゴミ問題や大気汚染解決の大きなきっかけになると思う。

トップ画像:デリー西部にあるゴミの山でゴミ集めをする少年©久保田弘信

 

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この記事を書いた人
久保田弘信フォトジャーナリスト

岐阜県出身。大学で物理学を学ぶが、スタジオでのアルバイトをきっかけにカメラマンの道へ。パキスタンでアフガニスタン難民を取材したことをきっかけに本格的にジャーナリストとしての仕事を始める。9・11事件の以前からアフガニスタンを取材、アメリカによる攻撃後、多くのジャーナリストが首都カブールに向かう中、タリバンの本拠地カンダハルを取材。2003年3月のイラク戦争では攻撃されるバグダッドから戦火の様子を日本のテレビ局にレポートした。2010年戦場カメラマン渡部陽一氏と共に「笑っていいとも」に出演。

久保田弘信

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