.国際  投稿日:2016/12/25

忘れ去られた国、アフガニスタン

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久保田弘信(フォトジャーナリスト)

2016年9月11日、今年もアメリカ同時多発テロの犠牲者のために追悼式典が行われた。日本のメディアもその様子を伝え、特集としてテロ事件のショックが原因でPTSDに悩む人に注目した番組が放送された。9月11日は世界中の人たちにとって忘れられない日だが、アフガニスタン戦争が始まった10月7日は知る人ぞ知る日だ。その10月7日、僕がチェックした範囲では日本のテレビで特集は見当たらなかった。

アフガニスタン戦争が始まった頃は北部同盟に従軍する日本のジャーナリストもいて、戦争の様子が報道されていた。しかし、戦後のアフガニスタン難民問題やアフガニスタン国内の治安悪化に関する報道は驚くほど少ない。2003年3月20日に始まったイラク戦争に全ての関心を奪われた感じだ。僕自身も開戦1ヶ月前からバグダッドに入り、イラク戦争の様子を日本に伝えた。アフガニスタンもイラクも戦争そのものの報道だけでなく、戦後その国がどのような状態なのかを報道するのがとても大切だ。しかし、戦争時より戦後の方が治安が悪く危険度が高い。しかし治安や難民問題は戦争そのものの報道より関心が低く、ジャーナリストとしてはハイリスク、ローリターンの仕事となってしまう。アフガニスタンに関して言えば、この14年間治安は悪化の一途を辿っていると言っても過言ではない。

首都カブールだけは治安が保たれていたが、2010年以降、首都カブールでさえテロ事件が頻発し、再び多くの難民が発生しつつある。 パキスタンからトルハムボーダーを越え、アフガニスタンへ入っていたが、2010年は「危険度が高いから陸路でのアフガニスタン入りはやめたほうがいい」と友人に言われ、陸路でのアフガニスタン入りを断念した。

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アフガニスタンでは周辺諸国から難民の帰還計画が進行しつつあり、長年祖国を離れて暮らしていた人たちにアフガニスタンでの地雷問題などを教えてから帰還してもらっていた。 帰還計画が進む一方でアフガニスタンの治安が悪化し、アフガニスタンを離れ難民として周辺諸国へ逃れる人もいて、帰還する難民、アフガニスタンから逃れる難民と、双方向の難民が存在していた。首都カブールからパキスタン国境に近い街ジャララバードに陸路で移動している時、反対車線を走るISAF(International Security Assistance Force:国際治安支援部隊)の車列にミサイルが打ち込まれた。

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同日夜、ジャララバードの警察署が爆弾テロにあった。アフガニスタン戦争後、日本のテレビが「タリバンがいなくなって女性ががブルカを脱いで自由に歩いています」と報道していたが、それはほんの一部の人たちで、2010年にカブールを訪れた時も多くの人がブルカを被っていた。

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日本も含め多くの国からの支援で学校が建ち、子供達は授業料は無料で教育を受けられる。それでも学校へ通えない子供達がいて、一日中ゴミ拾いをしている。

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アフガニスタンへは日本の援助金も多く送られている。カブールの空港ターミナルは日本のお金で新しく作られた。アフガニスタンの動脈と言ってもいいカブール〜ジャララバード間の道路建設にも。戦後14年経っても治安が回復できていないアフガニスタン。日本とこれほど関係の深いこの国の報道がもっと増えてもいいと思う。

トップ画像:ジャララバードの中心部で水汲みの仕事をする子どもたち©️久保田弘信

文中写真一番上から:アフガニスタンとパキスタンの国境トルハムボーダー /ミサイル攻撃を受けたISAFの車列 / すぐさま反撃に移る米軍を支援するアフガニスタン国軍/反撃するISAFの米兵 / タリバン政権が崩壊して女性は自由を得たと報道されているが、未だ多くの女性がブルカを使用している / 学校へも行けずゴミ拾いで生計を助ける貧困家庭の子供たち すべて©️久保田弘信

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この記事を書いた人
久保田弘信フォトジャーナリスト

岐阜県出身。大学で物理学を学ぶが、スタジオでのアルバイトをきっかけにカメラマンの道へ。パキスタンでアフガニスタン難民を取材したことをきっかけに本格的にジャーナリストとしての仕事を始める。9・11事件の以前からアフガニスタンを取材、アメリカによる攻撃後、多くのジャーナリストが首都カブールに向かう中、タリバンの本拠地カンダハルを取材。2003年3月のイラク戦争では攻撃されるバグダッドから戦火の様子を日本のテレビ局にレポートした。2010年戦場カメラマン渡部陽一氏と共に「笑っていいとも」に出演。

久保田弘信

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