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.国際  投稿日:2017/3/11

少数民族抑圧するミャンマー


久保田弘信(フォトジャーナリスト)

【まとめ】

・ミャンマーからロヒンギャ族難民がバングラデシュに流入

・ミャンマー政府が抑圧する難民数十万人

・日本はミャンマー政府の人権侵害に目をつむるな

 

■ロヒンギャ難民はバングラデシュを目指す

バングラデシュ南部の街Cox’s bazar(コックス・バザール)には世界一長いビーチが広がっている。その長さ120キロというから想像を絶する。夕方になると地元の人達が夕日を眺めに来る観光スポットだ。

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コックス・バザールの隣街テクナフからセントマーティン島へ観光船が出ている。あまり観光地らしい観光地がないバングラデシュにあってセントマーティン島は観光のメッカとなっている。その観光船がかつて日本の瀬戸内海で使われていた船だというのが面白い。船には現在も「今治→←瀬戸」の看板が残されている。

 

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この観光船の対岸に見えるのがミャンマー。近海では漁も行われているが、船はバングラデシュの船ばかり。よく見れば、対岸のミャンマー領には監視塔や有刺鉄線を見る事ができる。

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■バングラデシュ政府は難民受け入れ拒否

2012年6月14日。ミャンマーから1500人以上のロヒンギャ難民が隣国のバングラデシュに逃れて来た。バングラデシュ政府は「難民受け入れは国益にならない」(モニ外相)として1500人以上の難民を追い返した。この事件は世界中で大きなニュースとして扱われたが、日本のメディアはこの事件を殆ど報じなかった。

そして2016年、国連によると少なくとも27,000人もの難民がバングラデシュを目指したが、バングラデシュは難民の流入を止めるためミャンマーとの国境を封鎖し、ミャンマーから逃れようとする人びとを拘束または送還している。この対応は、国際法上の違法行為で、ノン・ルフールマンの原則に抵触する。(ノン・ルフールマンの原則は、重大な人権侵害を受ける危険のある国・地域への送還を禁止している。)

 

■ロヒンギャ族への人権侵害 日本政府の立場

ロヒンギャ族は仏教国ミャンマーにあってイスラム教徒であるため迫害を受けていて、人権さえ与えられていない状態にある。

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現在バングラデシュには国連(UNHCR)の管轄下にある難民キャンプは二つしかなく、それぞれの人口は1万人前後。残り20万人以上の難民が登録を受けられず、非正規のキャンプに住んだり、街中に隠れ住むような状態になっている。バングラデシュに不法入国してくるロヒンギャ難民は後を絶たず、その総数は30万人とも40万人とも言われている。

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国連(UNHCR)が管轄する難民キャンプは二つだけになってしまったが、NGOが運営する難民キャンプがテクナフ近郊にある。このキャンプでは1万人以上のロヒンギャ難民の人達が生活をしている。

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長い人は20年以上難民キャンプくらしをしている。

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ある難民が自国に帰れない理由を「泥棒が入って警察を呼んだら警察が根こそぎ家財道具を盗んで行ってしまった。そんな国に帰れる訳がない」と語った。

バングラデシュでもロヒンギャ難民は正当な扱いを受けられず、難民キャンプでは学校を作る事が許されず、教育の機会さえ奪われている。それでも生き残るためにロヒンギャ難民はバングラデシュを目指す。

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日本政府はミャンマーの民主化を認め円借款を破棄した。しかし、ミャンマー国内ではロヒンギャ族の大量殺害が行われ、民主化とは程遠い状態が続いている。新たなビジネスチャンスを求め、日本企業も進出するミャンマー。日本人はミャンマーで行われている人権侵害を知るべきだろう。

*写真©久保田弘信


この記事を書いた人
久保田弘信フォトジャーナリスト

岐阜県出身。大学で物理学を学ぶが、スタジオでのアルバイトをきっかけにカメラマンの道へ。パキスタンでアフガニスタン難民を取材したことをきっかけに本格的にジャーナリストとしての仕事を始める。9・11事件の以前からアフガニスタンを取材、アメリカによる攻撃後、多くのジャーナリストが首都カブールに向かう中、タリバンの本拠地カンダハルを取材。2003年3月のイラク戦争では攻撃されるバグダッドから戦火の様子を日本のテレビ局にレポートした。2010年戦場カメラマン渡部陽一氏と共に「笑っていいとも」に出演。

久保田弘信

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