[磯村かのん]風営法がクラブを規制する「ダンス=男女の享楽的雰囲気を過度に醸成させる」って何?〜欧米トップDJが年収46億円を稼ぐクラブビジネスも、日本では非合法?!
磯村かのん(ライター・通訳・起業家)
風俗営業法(風営法)とは、終戦直後にダンスホールで売買春が行われていたことを受けて1948年から施行されている法律です。年々取り締まりが厳しくなってきていて、過去4〜5年で最新の音楽や流行の発信地である複数のクラブが摘発され、また経営難などから営業を停止しています。
風営法では原則として、午前0時以降はクラブなどのダンスと飲食をする場で踊ってはいけないのですが、一般的なクラブは23時頃オープンし、真夜中過ぎから徐々に人が集まり、午前2時過ぎに盛り上がるので、ほとんどのクラブは無許可で営業をしているのが実態です。
クラブの規制が厳しくなっている近年では、不定期に見せしめのように摘発が行われています。しかし、数か月後には同じ場所に違う名前でクラブが再オープンする場合が多いので「風営法って何なんだろう?」と考えさせられます。
この曖昧で時代錯誤な法律があるため、万が一店内でトラブルがあった場合に警察を呼べないなどの理由から、一般企業がクラブ・ビジネスに参入しずらい状況です。クラブに欠かせないのがDJ ですが、米経済紙のフォーブスによると、2013年の世界のDJ長者番付で、1位はCalvin Harrisの約46億円、2位はTiestoの約32億円と日本人の想像を絶する桁なので、クラブ・ビジネスには大きな経済効果も期待できます。(註1)
警察庁によると風営法が規制する「ダンス」とは、「男女の享楽的雰囲気を過度に醸成させるダンス」です。この定義からすると、一体どんなダンスが享楽的なのかとても曖昧。現在ダンスは中学校体育の必修科目になっているので、「ダンス=享楽的」という図式が成り立たないことは誰の目にも明らかです。(註2)
実は17世紀頃イギリス統治下のアイルランドでは、宗教革命の一環としてポップ・ミュージック、芝居などと共にダンスが禁止されていました。不満を募らせた人々は、一見ダンスに見えない、直立して両手を腰に当てたまま足だけを動かすアイリッシュ・ダンスをつくったといわれています。(註3)
迷走中の風営法対策として、クラブ好きの人々は抑圧されたアイルランド人のように、法に触れない新しい動きを編み出さなくてはいけないのでしょうか?
(註1)Forbes The World’s Highest-Paid DJs 2013
(註2)法学館憲法研究所 (註3)Ancient Dancing – Irish
【あわせて読みたい】
- スタント・コメディアン『岡村隆史論』〜運動能力で笑いをとれるコメディアンが指し示すバラエティ番組の命運(高橋秀樹・放送作家)
- 箱根駅伝とAKB48〜その「人気」は「場」にあって「演者」にあるのではない(為末大・スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
- 株式会社ノーブル・エイペックス代表取締役社長・大関綾氏〜21歳となった“女子高生起業家”の戦略(安倍宏行・ジャーナリスト)
- 【オランダ・リポート】政府主催で各国のジャーナリストを集めた政策PRイベントを開催するオランダ〜世界規模の課題解決にグローバルな知恵の共有を。(安倍宏行・ジャーナリスト)
- 東京都は日本一の『高齢街』である〜都知事選の争点の一つは明らかに東京都の高齢化問題だ(石川和男・NPO法人社会保障経済研究所理事長)