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社会  投稿日:2014/2/20

[為末大]アスリートが背負うもの〜喝采が子供の砂遊びを“つくりたい”を“つくらなければ”に変える

為末
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為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

執筆記事プロフィールWebste

 

◆アスリートが背負うもの◆

その子は砂遊びをするのが大好きだった。毎日砂場に行っては夕方になるまで夢中で何かを作っていた。あまりに毎日夢中になるものだから、気がつくと周りの子供よりも上手に作れるようになっていった。

ある日、その子の砂遊びを見た大人が言った。

「この子には才能がある」

段々とまわりに人が集まるようになってきた。

「これはすごい」

「これはとても価値がある」

気がつくと砂場の周りには人がたくさんいて、子供の手の動き一つ一つに喝采が送られた。

いつの間にか、子供の砂遊びは、“楽しいからやっている”から“意味があるからやっている”に変わっていく。がんばれがんばれもっとがんばれ。やがて“つくりたい”が“つくらなければ”に変わっていき、少しずつ子供の眉間に皺がよるようになっていった。

ふと、ある時、子供は思いついてしまう。「もし失敗したらどうなっちゃうんだろう」。その日から何をしていても、失敗してしまったときの事が頭から離れない。砂を持つ手が震えるようになる。失敗しないように間違えないように。その事ばかり頭に浮かぶ。

みんなをがっかりさせたくない。そんな想いだけで砂場遊びを続けていく。もう周りも見えず砂だけを見てどのくらい経ったのだろう。急に背中を叩かれたら知らない人が前に立っていた。

「なんで砂場遊びをやってるの?」

気がつくと涙が出ていた。

横で別の子供が夢中で砂遊びをしている。僕もただ楽しいからやっていたのに、いつの間に変わっていったんだろう。ふと見回すとみんなが笑顔でこちらを見ているのに気づく。子供は腕をまくって砂を掴んだ。大丈夫と小さくつぶやく。

「やりたいようにやればいいんだ」

 

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