[安倍宏行]<山梨県雪害報道>大雪取材に既存メディアがついてゆけない2つの理由〜報道機関のあり方を考え直す契機に
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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SNS上で、テレビが山梨県などの大雪被害を伝えない!と怒りの投稿が多かったので、その原因を考えてみた。
まず、山梨県のテレビ放送の状況だが、電波受信できるのはNHK、NHK教育、日テレ系列のYBS(山梨放送)、TBS系列のUTY(テレビ山梨)の4チャンネルだけである。その他キー局を見る場合はCATVと契約しなければならない。山梨県のCATV加入率は84.6%と全国2位である。【注】
そういう状況を踏まえた上で、今回テレビで余り大雪情報が流されなかった理由は以下の2つだ。
(1)テレビクルーが豪雪地帯、孤立地帯にアクセス出来なかった。
これはテレビの弱点でもあるのだが、テレビクルーとは、東京キー局の場合、記者(ディレクター)、カメラマン、音声エンジニア、ドライバーの3人で動く事がほとんどだ。アナウンサーが同行する場合は4人。AD(アシスタントディレクター)も連れて行けば5人になる。
ローカル局では人も潤沢にいないので、取材する人間がデジカメを持って1人で総てをこなすことは日常茶飯事だが、今回の様な異常気象、災害時には最低でも3人は必要であろう。それはともかく、ほとんどの幹線道路が寸断された状況で、限界集落地域に辿り着くことは不可能だったろう。
(2)ネットを利用した放送の経験に乏しい。
SNSなどでに、写真や動画などが投稿がなされていたが、こうした情報をリアルタイムに放送する試みはほとんどなかった。その理由は、テレビ局にそうしたノウハウが無い事が挙げられる。テレビ局はTwitterなどの情報をオンエアに流す、といった番組を制作した事がほとんどない。
ネット上の情報を集め、画面にそれを表示することは可能だし、写真や動画をネット経由で入手することも、IPフォンで孤立している地域の人と話す事も出来るのだが、それには多くの人が必要であり、そうした対応を取る発想は浮かんでこなかったのだろう。
もはや速報力でテレビはネットに勝ち目はない。ならば、ネット上の情報収集し、付加価値を与え、どう放送に反映させるのか、報道機関と名乗るのならば、真剣に考えねばならない時期に来ている。
【注】ケーブルテレビ業界リポート2013|一般社団法人日本ケーブル放送連盟
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