民進党公約分析 東京都長期ビジョンを読み解く!その53
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
【まとめ】
・民進党のマニフェスト、「行政のムダの排除」など評価できる。
・就職氷河期世代正社員化や児童擁護など、時代の先をいく政策が多い。
・乳幼児死亡原因分析など、意欲的な政策も。
■マニフェストにこだわるも、中身はさすが
今回は民進党の公約分析。民進党は、民進党2017マニフェスト「7つの重点政策」という概要版と「新しい都政はまだ始まっていない【東京政策】」を発表している。
貫かれるのは「高齢化に伴う行政需要の増大や人口減少による税収減などを見据え、事業評価の徹底など行政のムダの排除はもとより、基金の適切な活用など、将来にツケを残さない、強固な財政基盤を確立させます」「事業評価をはじめ、行政のムダの排除には、外部の目を活用します」などの問題意識。評価したい。
マニフェストでは
・一部のための政治ではなく、ひろく都民のための政治を実現します。
・「口きき」記録を公開し、補助金などの適正化を検証します
といった記述も。何時かの民進党の面影・ノスタルジーさをそこに感じる。
■時代の先をいく政策
具体的な中身を見ていこう。
〇中高年になった非正規雇用で働く就職氷河期世代の正社員化に向け、職業能力開発 とマッチング、奨励金、きめ細やかな紹介派遣の対応など、あらゆる視点から支援を行います。
〇いわゆる「ブラック企業」「ブラックバイト」の根絶に向けて取り組みます。また、労働相談体制の充実・強化を図ります。
〇犯罪被害者支援条例の制定に向けて取り組みます。
〇偏見や差別を受けることが多いLGBTの人権施策はもとより、ヘイトスピーチは 許さないとの立場から、多様性が尊重される東京の実現に取り組みます。
〇児童養護施設等に入所している児童の自立に向け、入所中や退所後のケアを手厚く行える体制を整備し、自立支援を強化します。
〇東京の森林再生に向けて、林業の人材確保に取り組むとともに、多摩産材の利用拡大に向けて、公共施設や民間施設での利用を支援するとともに、東京2020大会での競技施設での利用を促進します。
なかなかである。なんとも見直した。就職氷河期世代、児童養護、森林などへの着目、さすがの内容だ。
■乳幼児死亡原因分析制度など意欲的な政策も
とはいえ、残念なことがある。聞き覚えのない言葉が並ぶことだ。
例えば、「チャイルドデスレビュー制度」、「虐待対応力強化のため院内虐待対策委員会(CAPS)の設置」といった記述。
調べてみると前者は0-4歳乳幼児の全死亡症例を調査し、死亡原因を含んだ死に至る情報、予防可能な因子を把握、問題点を抽出するものらしい。
後者は「院内の児童虐待に対応する複数の部門が、各々の視点から、児童虐待かどうか、通告等を行うかどうかなどについて合議の上判断し、病院としての通告や警察への連絡などを行う組織を指します。CAPS(Child Abuse Prevention System)」(東京都「チームで行う児童虐待対応~病院のためのスタートアップマニュアル~」より)ということらしい。
素晴らしい。しかし、過去の「政策新人類」じゃないが、「俺たち、私たちの考えた政策凄いだろう」「知っているぜ」感が出ているようにも感じる。また、「作戦を実行」「100%」など言葉の端端に素人感が抜けない。
厳しいことを言ってきたが、これまで分析した各党の中で、正直公約のレベルは一番高かった。民進党に期待する。
【注意】上記あくまで私の意見ですのでご参考に。繰り返しますが、特定団体を応援する目的で記載していませんので悪しからず。
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。