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.国際  投稿日:2018/2/14

前のめり韓国 北朝鮮の思う壺

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宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表) 
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2018#07
2018年2月12-18日

 

 

【まとめ】

・北対話のみならず米朝間対話まで仲介しようとする韓国文大統領。

・金正恩の妹に関心集まる。韓国報道のエンタメ化。

・非核化問題が動かなければ、北朝鮮の思惑通りになる。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ記載されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=38447で記事をお読みください。】 

 

 

 

 先週平昌五輪が始まった。分断された民族が統一を願う気持ちは良く分かる。しかし、あそこまで北朝鮮に足元を見られる中で、南北対話のみならず、何を勘違いしたか、米朝間対話まで仲介しようとする韓国大統領の姿勢には、公平に見ても、違和感を感じざるを得ない。問題の本質は米朝関係ではなく、米中関係だからだ。

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写真)習近平国家主席(中国)とトランプ大統領(米国)
出典)Official White House Photo by Shealah Craighead

 

 前のめりの韓国は北朝鮮側の思う壺それにしても、金正恩の妹とはいえ、韓国の大人たちが右往左往し、内外のマスコミが「美女応援団」に必要以上に関心を払うのは、如何なものか。情けない話だ。ジャーナリズムの本質はエンタメ報道ではない。真実を伝える「調査報道」という原点は、韓国の報道関係者には無縁なのか。

 

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写真)金与金氏(中央の女性)
出典)Republic of Korea

 

 

 かくいう筆者はこの原稿を沖縄県那覇市で書いている。昨日から今日にかけて、名護市辺野古(へのこ)から、同市内中心部、更には高速道路を使わずに、恩納(おんな)村、読谷(よみたん)村を抜け、嘉手納飛行場のフェンスの横を通り、北谷(ちゃたん)町から宜野湾(ぎのわん)市、浦添(うらぞえ)市を抜けて那覇に帰ってきた。

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写真)キャンプ桑江
出典)沖縄県HP

 

 外務省現役時代は、これだけの地名を覚えるのに数カ月かかったが、今は懐かしい場所ばかり。今回は一個人としてレンタカーで走り回ったのだが、フェンスの向こうにある海軍のキャンプ桑江、海兵隊のキャンプフォスター、空軍の嘉手納飛行場などの広大さに久しぶりに圧倒された。沖縄の負担の重さを改めて痛感する。

 

 名護市内では「宮里そば」というお店にふらっと立ち寄った。何とも言えず美味しい麺を堪能した。愚妻と一緒だったが、午後二時過ぎの店内はほぼ満員、他のお客さんは地元の人ばかりだったと思う。つい先日ここで市長選があったとは思えない静けさだったが、これまで8年間、この町には補助金が十分来なかったのだなと直感した。

 

〇 欧州・ロシア

 

 2月中旬は恒例のミュンヘン安全保障会議がある。今年は16-18日に開催されるが、その直前の15-16日にはブルガリアでEU外交理事会の非公式会合が開かれる。また、15日にはポーランドとドイツの首相がベルリンで会談を行うが、最大の議題はロシアからのNord Stream 2パイプラインのようだ。

 

〇 東アジア・大洋州

 

 2月11日の米副大統領の発言は米国の譲歩の始まりなのだろうか。帰国途上の機上で副大統領は、「最大限の圧力を維持する一方、南北対話の進展次第で、前提条件なしに、北朝鮮と直接対話を行う用意があると述べたそうだ。勿論、対話が真に実質的に進展すれば喜ばしいが、非核化問題が動かなければ、北朝鮮の思惑通りだ。

 

 米国の譲歩は日本は勿論、結果的に韓国にとっても悪夢となる。こうなると筆者は1994年を思い出さざるを得ない。当時の宥和政策が繰り返されれば、北朝鮮は間違いなく「核保有国」となる当時の米国政府は「時は日米韓にあり、北朝鮮の軍事力は今がピーク」と言ったが、実は当時も「時は北朝鮮にあり」だったのではないのか。

 

 16日から中国などでは春節休暇が始まるが、韓国大統領は本気で米国の強硬姿勢を封じ込めようとしているようだ。そうであれば今、日本外交は重大な岐路に差し掛かっている。妥結の見通しのない対話を続けても、北朝鮮は決して妥結させるつもりなどないと思うからだ。

 

〇中東・アフリカ

 

 先週末、自国戦闘機がシリアで撃墜されたイスラエルは、イランのドローンを撃墜したという。こうした「本格的交戦」に近い状況がシリアで起きるとは長い間予想されなかったはずだ。1967年の第三次中東戦争でイスラエルがゴラン高原を占領して以来、賢いアサド政権は戦線を拡大せず、事実上の停戦が維持されてきたからだ。

 

 これ以上状況が悪化しないことを希望するばかりだが、イランもイスラエルとの直接交戦は望んでいないだろう。今はもう、そう祈るしかない。

 

〇 南北アメリカ

 

 相変らずトランプ氏はロシアゲート問題に関する司法省とFBIの動きを記す極秘報告書公表問題で厳しい戦いを続けている。先々週は共和党側作成文書の公開を認めたが、先週は民主党側文書の公表を拒否したそうだ。一方、スタッフの家庭内暴力問題で大統領首席補佐官の進退が問われている。

 

 元海兵隊大将のケリー首席補佐官はこれまでよく我慢したものだと思う。この件でトランプ氏はケリー氏に激怒しているそうだが、それは違うだろう。万一、ケリー補佐官が辞任するか更迭されれば、トランプ政権は更に弱体化する。トランプ氏の大統領としての真の度量が問われることになる。

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写真)ケリー首席補佐官
出典)DOD photo by Glenn Fawcett

 

〇 インド亜大陸

 

 12日、インド首相がパレスチナ、アラブ首長国連邦、オマーン訪問を終え帰国する。

 

 今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

 

写真)女子アイスホッケー「南北合同チーム」応援団と文在寅氏
出典)Republic of Korea

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この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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