[安倍宏行]<エネルギー基本計画>原発を「ベースロード電源」に〜1月貿易赤字が原発停止の余波で2兆7900億円
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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ようやく、だ。民主党政権時代から、早く基本計画を策定せよ、との声はあった。自民党政権になっても、政府は一向に「エネルギー基本計画」を国民に示さなかった。それは、とりもなおさず、国民の中にある、根強い原発アレルギーに対し、配慮に配慮を重ねてきたからだ。
今回の「エネルギー基本計画」では、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けた。初耳の人も多かろう。民主党時代から、「ベース電源」という言葉はあった。一定量の電力を安定的に供給する電源、という意味で使われる用語だが、東日本大震災以前は、水力発電と原子力発電がそれを担ってきた。「ベース」を海外で一般的に使われている「ベースロード(Baseload)」に言い換えたところで、何かが変わるわけでもない。原発は安定的な電源である、と言っているだけである。
本計画は、原発の将来はどうするのか、という点に踏み込んでいない。依存度を減らす、との表現に留まっているだけである。何事も曖昧なままにしておいて政権運営に響かないようにしようという姿勢がありありだ。
新聞などには、「現実路線へのシフト」といった表現が躍るが、問題はそこではない。財務省発表の1月の貿易統計速報によると、貿易収支は2兆7900億円の赤字だ。単月の赤字額としては1979年以降で最大で、初の2兆円超えだ。これはひとえに、原発53基をすべて停止し、その分を賄う火力発電用のLNG(液化天然ガス)を高値のスポットで輸入し続けているからである。しかも円安が輸入価格の上昇に拍車をかけている。2013年の貿易統計速報によると、貿易収支は11兆4745億円もの赤字である。これも1979年以降最大。初めて10兆円を超えている。
このような異常な状態をいつまでも続けられるわけがない。電気料金は上がり続けており、私たちの生活を圧迫し続けている。エネルギーの将来のベストミックスを明確に示さず、原発再稼働のための安全基準達成が今どの段階にあるのかすら国民に明確に説明しないのは無責任の極みである。中途半端な説明では、もう私たちは納得できないところにまで来ている。
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