[宮家邦彦]<注目のアメリカ外交>オバマ大統領のアジア歴訪とバイデン副大統領のウクライナ訪問[外交・安保カレンダー(2014年4月21-27日)]
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
この原稿はソウルのホテルで書いている。韓国の大手シンクタンク・アサン研究所が主催する年次総会に呼ばれたからだ。気のせいかもしれないが、昨年に比べても街に日本人が少ないような気がする。冷え切った日韓関係を象徴するような光景だ。
今週(2014年4月21〜27日)はオバマ大統領のアジア歴訪に触れない訳にはいかない。ホワイトハウスの関係者も日程作りが大変だったろう。国賓待遇のため大統領には23日中に東京に入ってほしい、東京に行くならソウルに絶対来てほしい、その後もマレーシアとフィリピンには回りたい。あちらを立てればこちらが立たずということ。本当にご苦労様です。
大方の関心は共同声明、共同記者発表の内容だろうが、恐らく米側は中国に対するあからさまな表現を嫌うだろうし、日本側もそれに固執する必要はないだろう。今回は日本、韓国、マレーシア、フィリピンを訪問することだけで、メッセージは明らかだからだ。個人的にはTPPがどこまで歩み寄るかの方が重要だと思う。
オバマのアジア訪問以上に気になるのはバイデン副大統領のウクライナ訪問だ。この人にウクライナなどという重要な仕事を任せて良いのだろうか。昨年12月に日韓中を訪問した際のパフォーマンスは最悪だった。彼は素晴らしい上院議員の一人だったとは思うが、外交家としては残念ながら落第である。
バイデンが訪問するキエフは東アジア以上に事態が流動的だ。大統領がアジアに行く以上、オバマの代わりということなのだろうが、本当に大丈夫なのかね。またとんでもない勘違いをして、ロシアやウクライナに間違ったシグナルを送らなければ良いのだが・・・。
今週は中東で大きな動きがないが、こういう時こそ最も警戒すべきだろう。大きく報じられてはいないが、相変わらずイラクのバグダッドやファルージャではテロが絶えない。先週にはイエメンとサウジの国境でも小競り合いがあって、サウジの国境警備兵が殺されている。
アラビア半島のアルカーイダ勢力は確実にイエメンにもおり、いつ活動を活発化させてもおかしくない。こうした予測が的中しないことを祈るばかりだ。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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