[古森義久]<現実味を帯びてきた?米中戦争の可能性>全面衝突と破局を招く温床が十分にできつつある
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
チキンゲーム(chicken game)とは、2人の当事者が相手に向かって車を疾走させ、どちらが正面衝突を恐れて、先にハンドルを横に切るかを試す「臆病者ゲーム」のことである。
いまアメリカと中国との間で、このチキンゲームが米中戦争という危険きわまるシナリオを賭けて、展開されるようになった。
わが日本ももちろんその危険の中心地に立っている。 中国はアジアでアメリカ主導の安全保障秩序に挑む姿勢をますますあらわにしてきた。オバマ大統領はアジア歴訪で、中国の軍事がらみの膨張に抑止の警告を発した。だが中国は同大統領が帰国してすぐ、南シナ海のベトナムの排他的経済水域(EEZ)内で国際規範を破り、一方的に石油掘削の作業を始めた。オバマ大統領の横面を殴るような行動だった。
中国は南シナ海ではさらにアメリカの同盟国のフィリピンをも軍事恫喝し、東シナ海でも日本領土の尖閣に対して軍事力を背景に一方的な侵入を繰り返す。中国のこうした好戦的な行動は、結局アジアから米軍を追い出し、自国の勢力圏を広めたいという意図による、という見方がワシントンではコンセンサスとなってきた。
ワシントンでのこの論議でいま最も関心を集めているのはオーストラリアの元国防次官で中国戦略研究家のヒュー・ホワイト氏が発表した論文である。中国の狙いを分析した同論文の主要点は次のようだった。
「中国はアジアからアメリカを追い出すために、アメリカとアジアの同盟諸国とのきずなを弱めようとする。中国側はアメリカがたとえ同盟諸国に軍事攻撃があっても、中国と全面戦争をする意欲はないとみる。その結果、同盟諸国への軍事圧力を高め、やがてはそれら諸国がアメリカから離反していくことを期待する」
「一方、アメリカ側も中国は対米全面戦争だけは絶対に避けるとみている。だから中国がアメリカの同盟諸国に軍事攻勢をかけても、決定的な攻撃にはならないとみる」
以上のホワイト氏の考察は米中両国がともに相手は最終的な戦争はしたくないから、軍事攻撃に通じうる威嚇もそう重大に受けとることはないと判断する、とみるわけだ。
一種のチキンゲームである。しかし、そこには小さな誤解や計算違いが全面衝突という破局を招く温床が十分にできつつあるのだといえよう。
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